「農民」記事データベース20010312-484-08

山形

市場の空気を短歌に

「新春句歌歳時記」最優秀賞の佐藤文子さん


初市にわが畑の菜も並べ終へ
  競りの開始のベル鳴るを聞く
 山形県の地元紙「荘内日報」が主催した第十四回荘日「新春句歌歳時記」の最優秀賞に、庄内農民センターの組合員、佐藤文子さんの作品が選ばれました。文子さんは、短歌を始めて二十年。地域の短歌の会に参加し、「つくし」という歌集に短歌を寄せたりしてきました。

 「この短歌はわりとスラッとできた」そうですが、「いつもは“産みの苦しみ”をしながら作る」のだと言います。「以前は、お正月を迎えないうちから新春の短歌を作るのは抵抗があったのですが、この歌にこめた思いはいつも同じ。市場のベルは八時に鳴るんですが、あのジリジリーという音の張り詰めたような空気を思い出して、この短歌を作りました。不安というか期待というか、丹精込めて作った野菜を出すときの緊張感ですね」と文子さん。

 いつもメモ用紙と鉛筆をカッポウ着のポケットにしのばせて、農作業や日々の生活のなかで感じたことを書き留めておき、一息ついた夜、短歌にしたためるのだそうです。

 文子さんとご主人は、キュウリなどの野菜や野菜の苗木を出荷しており、庄内農民センターでも篤農家として尊敬されています。たくましいというより、小柄で穏やかな印象の文子さんですが、やはり農作業の話になると話が尽きないところは農家のお母ちゃん。

 豪雪にすっぽり包まれたハウスの中では、生協の農民運コーナー向けの小松菜がけなげに育っていました。「ハウスの天井から落ちるしずくが跳ねかえって、葉に泥が付いて。薄いネットで覆うとか、工夫しようと思っているのよ」と楽しそうに話します。物を作る農民の思いが、まっすぐに胸を打つ文子さんの短歌です。

(新聞「農民」2001.3.12付)
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2001年3月

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