「農民」記事データベース20010312-484-02

農への誇り踏みにじる

農業者年金改悪に反対

 「われわれ農家は、国民に食料を供給し、地域を守るために必死にがんばってきた。それに報いるのは当たり前だ」――政府が進める農業者年金改悪に怒りの声が上がっています。福島の「生活できる農業者年金を求める県北の会」の渡辺賢一会長(59)に聞きました。同会は、福島農蚕高校の同窓生十四人が発起人となって発足。トツトツと話す渡辺さんの言葉には、農業への強い誇りと、それを踏みにじる政府への憤りが込められています。


 私たちの要求は、農業者年金制度の改悪に反対、そして高齢者が生き生きと暮らすことができる年金制度に変えることです。農業者年金制度は当初、「サラリーマン並みの老後保障を」ということで発足しましたが、いざ受給年齢になってみると年金額は非常に少なくて、とても暮らしていけません。

 同窓生に連絡をとってみたら、途中でやめた人がたくさんいることがわかりました。わずかな農業収入のなかで毎月二万円づつ掛けてきた農家に他産業並みの年金を支払うこと、同時に若い人たちが希望を持てる年金の仕組みを作ること、そのために農業をしっかりと基幹産業として位置付けてほしいと思います。

 他産業なみの年金を

 私たちは高校を卒業して希望に燃えて農業を始めました。農家は食料を生産するだけでなく、地域づくりに相当な役割を担ってきました。就農した翌年に農業基本法ができましたが、当時は今と違って「ものを作れ」という時代でした。農家は規模拡大して余った労働力を他産業にまわし、高度経済成長を支えてきました。農村の建設関係の仕事は農民を抜きにしてはできなかったと思います。

 そして七〇年代に入って減反政策が始まり、米をはじめすべての農産物の輸入自由化。今は「ものを作るな」という時代です。規模拡大した二十ヘクタール、三十ヘクタールの農家がまいっています。

 農家が農業で収入を得られないのは遊んできたためだと思われるのは心外です。農家は農業に誇りをもち、農業をめぐるたいへんな状況のなかで必死になってがんばってきました。

 地域にとって年金はけっしてムダ金になりません。私たちが申し入れに訪ねたある農協は、年金の取扱額が経済活動の一・五倍あり、そのお金はほぼ一〇〇%地元で消費され、地域を巡回するのです。

 「生活できる農業者年金を求める県北の会」は、昨年十一月九日、学習会と結成会をやり活動をスタートさせました。福島農蚕高校の同窓会で「我々はこれまで誇りをもって必死に農業をやってきたのに、今になって年金がこんなことではどうしようもない。がんばって運動しよう」と話し合ったことがきっかけです。

 この運動を大きな力に

 福島県農業会議所や福島市農業委員会、県北の各市町村の自治体、農協を手分けして申し入れにまわりました。それから、福島農蚕高校の同窓会の役員とも懇談し、会長、副会長も「ぜひ力になる。役員会で取り上げる」と言ってくれました。同窓会はいろいろな人脈を持っていて、福島農蚕高校の卒業生は農村の政治をリードしています。さらに一歩広げた活動ができると思います。

 農民は要求を表に出さないのを美徳にしてきました。労働者が組合を作り団結して要求を勝ち取るなかで、農民は地域で政府を支える役割を果たしてきました。それがこんな結果を招いたと思います。いま農家ががんばる必要がある、農家が「ちゃんと将来の生活を保障しろ」と主張することが農村にたいへんな変化を起こすと思います。

 これを大きな力にしていくには、大きな広がりが必要です。私たちのような「会」が、県内や全国でできて、ネットワークでつないでいけたらと思います。

(新聞「農民」2001.3.12付)
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2001年3月

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