「農民」記事データベース20010305-483-11

NHKスペシャル「日本の野菜市場をめざせ」を見て

触れない多国籍企業の存在

産直運動全国協議会 齋藤敏之


 二月十八日夜九時から放映されたNHKスペシャルは、急激な工業化を進めた東南アジアの国々が、九七年五月のタイ・バーツにはじまる「アジア通貨危機」をきっかけに、それまでの工業化重視の政策から、日本への農産物輸出を強める方向に変わってきていることを伝えた。

 とくに韓国は、日本に近いという条件を生かし、国をあげて、ハウスの建設費を半分補助したり、重油代の補助により、日本のハウス面積に匹敵する広さの施設園芸産地を作り上げ、そこで生産されるミニトマトやピーマンが大量に日本に輸出され、その結果、日本の価格が大暴落していることを詳しく報道した。

 翌日、この番組を見た消費者から「国産野菜を見つけるのが大変になるね」と話しかけられたほど反響が大きかったようだ。

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 報道は、セーフガードを求めるJA大会の模様を伝えている。

 しかし、セーフガード(緊急輸入制限)がWTO協定で認められた権利であることや、アメリカ・韓国などが自国の農業を守る当然の権利として行使していることにはふれない。

 しかも、農民運・食健連が何回も行った政府交渉で、当局が「生鮮トマトの輸入量は、国内生産のわずか一%、それをもって価格暴落の原因を輸入増に結びつけられない」、「パプリカと青ピーマンは用途が違う」などの理由を上げ発動を拒み続けていることに全くふれていない。

 また、こうした国々で繰り広げられる低賃金を資源とする開発輸入によって、莫大な利益をねらう日本の商社や、ドールなど流通関連の多国籍企業の存在がほとんど出てこない。

 それどころか、番組全体が「『輸入が増え安くなるのは消費者利益』という基調が貫かれている」と見るのはひがみだろうか。

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 われわれがこの放送を生かすかどうかは、国産の物を食べたいという消費者と一緒に、世界のNPOやNGOの共通の声になっている「WTO協定を改定し、食料自給率の向上と食料の安全確保を」求める運動を強めることだろう。

(新聞「農民」2001.3.5付)
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2001年3月

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