もの作る実践交流農の会が定例研究会
「農の会」の定例研究会が、一月二十七・二十八日の両日、東京都内で開かれました。日本全国で雪に見舞われ、交通網が大混乱になるなか秋田、石川、新潟、三重など全国から会員が集まり、日頃の農業技術や実践を熱心に交流しました。 農民連に団体加盟する「農の会」の前身は「日本ミチューリン会」。「農を愛し、農を科学し、農を創る」をモットーに、研究会などの活動を行っています。 一日目は、ミミズなどの土壌動物の研究で知られる中村方子(まさこ)博士が「ミミズなどの土壌中の小動物の生活と土の素顔」と題して講演。中村さんは「ミミズは土にとってとても大切で、愛すべきもの。同じ自然に共存する仲間」と語り、土の中の小動物の生活が、豊かな土を作ることをわかりやすく話しました。 また、大学(動物生態学専攻)在学中、ダーウィンの「ミミズと土」という著作に感激してミミズ研究を始め、半世紀がたったこと、その間のポーランドや南米のギニア高地、ガラパゴス諸島など世界中のミミズ研究の成果がいきいきと語られ、自然の恵みを科学する博士の話に、会場からは質問が相次ぎました。 各地からの報告では、栃木農民連の海老原恒夫さんが、関東ブロックのトウモロコシのリレー出荷の取り組みを紹介し、多様な販売ルートで消費者に農産物を届け、仲間を組織して農業生産を守ろうとよびかけ、共感の拍手が送られました。このほか土壌中の小動物の観察研究や、ブドウ、トマト、米、野菜など各地での栽培・管理技術などが報告されました。
農の会会長柳下登さんのあいさつこれまで「農の会」では、安全で健康な食べ物を作るにはどうしたらいいかという点を追求してきました。それには丈夫な作物・家畜を作ることが大切ではないかと思いますし、その丈夫な作物をつくる基本は「土作り」にあるのではないかと思います。しかし、土というのは歴史的に見ますと、生物が出現して、その遺体などが岩石や砂に有機質として堆積し、初めて土になるわけです。さらにその有機物の堆積のなかに小動物や微生物がたくさん生活するようになり、それをまた土台にして作物が育つ――つまり土自身が有機質を作ってきた、この「土の歴史」を土台にして私たちの農業があります。したがって土自身が生きていて、「土を活かす」技術が必要です。この土壌の条件を持続させる、永続的なサイクルを維持するところに、農業の意味、持続的な営農があるのではないかと思います。 ここで今日は、これまで農の会がやってきた「土を活かす」活動に加えて、次のことを提案したいと思います。それは、地球の歴史、自然の歴史を考えてみますと、ビッグバンから始まって、原子が現れ、分子が現れ、さらに多様で複雑な高分子が作られたという歴史を考えますと、自然というのはだんだんと多様になってきているんですね。生物界でも、最初の単細胞のごく少数の生物の時代から、今日では多様な生物の自然ができています。 ですから「自然の歴史から学ぶ」ということから見ると、多様性を維持してこそ自然なのだという点で、運動として、いかにして農業のなかに多様性を維持していくか、多様な農業・農作物の作り方はどうあるべきか、営農のなかに多様さを作ることを考えたいと思います。 生物の生態系というのは、お互いに協調し合い、一見安定しているように見えながら、その系の中で自分の個体と種族を維持・発展させるシステムです。そういう意味で、静的ではない、もっとダイナミックな関係のなかで生物は進化してきたのです。多様性というのは、単につながり合っているだけでないのです。生き抜いていく力を育てているという点が大切です。 私たちは、こういう自然の経緯を農業のなかで生かしていくことによって、より農薬の少ない、丈夫でおいしい農作物を作ることができるのではないでしょうか。
(新聞「農民」2001.2.12付)
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[2001年2月]
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