農水省 ミニマム・アクセス「見直し」はポーズだけ“輸入しながら減反”を続け現状変える気ない政府・自民党
農水省は十月二十日、自民党農林水産物貿易対策特別委員会に対し「コメに関する検討の視点」なる文書を示しました。この中で、焦点のミニマム・アクセスについては“返上、削減、現状維持の三つの選択肢があるが、返上、削減はできない”と説明し、年末までにまとめるWTOに対する「農業提案」に盛り込もうとしています。 しかし、これでは「輸入しながら減反とはなにごとか!」という当然の怒りに対するゼロ回答であり、現状を変える気も能力もないことを示すだけです。
交渉に弱腰の農水省農水省が拒否回答の口実にしているのは、ウルグアイ・ラウンドでミニマム・アクセスを受け入れてしまった以上、今さらそれを変更するのは「各国から強い非難や反発を招く」というもの。またWTO農業交渉が「改革過程の継続」を前提にしている以上、WTOの例外なき自由化路線からはずれる提案などできないとも述べています。しかし最初からこんな弱腰では、そもそも「交渉」する意味がありません。
アメリカ提案したたかアメリカは、穀物メジャーの買いたたきと価格保障(不足払い制度)の廃止にともなって大赤字の農場経営を救済するために、二〇〇〇会計年度(九九年十月〜二〇〇〇年九月)に農場補助金を史上最高の三兆四百億円(二百八十億ドル)支給。しかもWTOに六月に提出したアメリカ農業提案では、こういう補助金を「無制限に認めること」を要求しています。この補助金は農場救済の側面と同時に、大企業の買いたたき価格で外国に輸出するというダンピング輸出を認めるという側面を持っています。中国の港に着くアメリカ産小麦の価格が、中国の国内産小麦の価格よりも安いという異常な事態は、これが原因です。 こういうダンピング補助は、最悪の「貿易歪曲的補助金」ですが、これを「無制限」に認めろというのがアメリカ提案。
WTO協定の改定をアメリカが従来の枠組みをかなぐり捨てて、したたかな提案をしているのに、日本政府がミニマム・アクセスの見直し提案もできないなどというのは、無能と弱腰の証明以外のなにものでもありません。九州大学の鈴木宣弘助教授は皮肉まじりに「(アメリカ提案が)許されるならば、他の国も何でもできる」「わが国も農家への補助金支給の名目を巧妙に考えて米国のような対応を参考にする必要があろう」(『農政転換と価格・所得政策』)と指摘していますが、冗談ではなく、ミニマム・アクセスの廃止と例外なき自由化押しつけの中止、各国の農業政策・予算への内政干渉の中止など、WTO農業協定の根本的改定を提案すべきです。
(新聞「農民」2000.12.11付)
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[2000年12月]
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