セーフガード重い腰あげはじめた農水省「直ちに発動」要求、追撃を
“野菜の価格下落は豊作のせいだ”“輸入が原因とはいえない”と言い張ってきた農水省。しかし、農民連や農協グループの強い要求と、地方自治体の決議が相次ぐなか、やっと重い腰をあげはじめました。 農民連の十一月十七日の要請に対しては「調査中」「精査中」の繰り返しに終始した農水省ですが、翌週の十一月二十四日に、谷洋一農相がネギ、玉ネギ、トマト、生シイタケ、ピーマン、イ草の六品目について、一般セーフガード発動のための「政府調査」開始を要請したもの。 今年のキャベツや玉ネギの産地廃棄は九〇年代に入って最高を記録しており、廃棄量は輸入の激増にちょうど正比例して急増しています。一刻も早い発動が求められます。 農民連がセーフガード発動を求めて大運動をスタートさせたのは今年春。当時は、農水省はもちろん農協グループも、セーフガードの“セ”の字も言いませんでした。しかし、歴史を動かすのは民衆です。まだ第一歩を踏み出したにすぎませんが、農民連の運動が政府を動かしつつあることは事実。大いに確信を深め、次のハードルを乗り越える運動に挑戦しましょう。
まだ「序の口」農水省の要請は、ほんの「序の口」で、まだまだ乗り越えなければならないハードルがあります。農産物のセーフガード発動の手続きは、(1)農水省が「損害の証拠」を集め、(2)農水省が大蔵・通産に「調査開始」について要請し、(3)協議によって「調査開始」を決定し、(4)やっと正式調査を行い、(5)発動が必要かどうかを決定し、(6)発動する場合はWTOに通報して関係国と協議したうえで正式に発動する――というもの。現在の段階は(2)です。
損害は十分立証済み通産省は「因果関係を説明できるデータが集まれば調査を始める」(「日経」十一月二十一日)といい、調査が終わるまでに「一年かかる」などとバカげたことを考えているようです。しかし「因果関係を説明でき」れば、損害の認定には十分なはず。「一年がかり」などというのは、セーフガード発動を引き延ばし、ほとぼりをさますことをねらったもの。九三年のニンニク・ショウガのときと同じやり方です。 通産省は『二〇〇〇年版不公正貿易報告書』で、韓国の乳製品に関するセーフガードをとりあげ「乳製品の輸入と重大な損害との因果関係の立証が十分に行われていなかった」などと指摘しています。韓国がEUなどから異議を申し立てられているのは事実ですが、それにもかかわらず、韓国は九七年三月から現在にいたるまでセーフガードを発動しています。 自分がセーフガードを発動する気がないのを棚にあげて韓国を非難する! こういうバカげたことをやめ、国内農業を守るためにWTO上の権利を行使するという韓国の姿勢を、少しは見習ったらどうでしょうか。
“独自”基準見直せ日本政府が国際的に見て異常なほど調査に時間をかけ、結局、ガット時代もWTOになってからもセーフガードを一度も発動したことがない原因は、発動するためには「国民経済上緊急の必要性」がある場合という基準を作っているため。しかし、WTOセーフガード協定のどこを読んでも「国民経済」などという大げさな基準はなく、「業界」の損害が唯一の基準です。 「基準を整備しなければならない」(高木事務次官)というくらいなら、こういう国際的に通用しない基準を見直すべきです。しかも損害調査の体制もアメリカ五百人、韓国三十人に対し、日本は“兼業”役人がたった三人。最初からやる気が違います。 ミニマム・アクセス問題では「輸入は義務だ」という“独自”の見解にもとづいて輸入を続け、セーフガード発動では「国民経済」という“独自”基準に固執して、農民の損害が明確になっても輸入を制限しない――こういう逆立ち政治に対し、手をゆるめず追撃することが求められています。
(新聞「農民」2000.12.4付)
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[2000年12月]
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