四季を通じ実る新種のイチゴ改良重ねて栽培に成功東京農民連会員、山口さん
収穫時期を選ばず、果実はしっかりとしていて甘い――農民連の組合員が育成した優良なイチゴの品種があることをご存知ですか? 東京農民連と東京産直センター組合は、八王子市の組合員、山口照男さん(55)が作った「純ベリー2」という新品種の苗の供給を準備し、栽培の普及を目指しています。山口さんは、「全国新品種育成者の会」の会員で、この道三十五年の大ベテランです。 優れもの「純ベリー2」「純ベリー2」は、(1)果実は糖度が高く「とちおとめ」並み、「女峰」と同じくらい硬く、粒の揃いもいい、(2)収穫時期を選ばない四季成り性品種であるなど、優れた品種特性を持っています。一般 に出回っている品種は、ある程度気温が下がり、日照時間が短くならないと花芽をつけませんが、「純ベリー2」は四季成り性なので、温度や日照を調節することなく促成栽培ができます。 「全国には優れた品種がまだまだある」と山口さん。しかしイチゴの品種特性を生かすには、それに合った栽培の仕方をする必要があるため、栃木県の「とちおとめ」や福岡県の「とよのか」など、有名な産地は品種を特定し、栽培管理を徹底しているといいます。 35年間、熱意と探究心の成果山口さんが品種改良にとりくみ始めたのは、十八歳で家業を継いだ時。当時、養蚕が盛んだった八王子市は急速に都市化が進み、作目転換が迫られていました。その頃流行していた品種のイチゴを作付して失敗。それを機に、気候風土に合った品種を見つけようと努力を重ね、八七年に「王香」、九四年に「純ベリー」を品種登録。「純ベリー2」は三作目になります。 また、山口さんの畑(約一ヘクタール)には、ネギ、インゲンなど、その土に適するように自ら改良した品種が植わっています。 「畑をマンションや駐車場にした方が経済的には楽だったかもしれない。しかし、汗水流さないで手に入れた金は、ろくなことにならない」。「純ベリー2」は、こうした都市農業への熱意と探求心が作り出した品種です。「次はこんな風に改良しようと考えると楽しい」と言う山口さん、「仲間の農家の経営に貢献できれば」と語っています。
◇ 「純ベリー2」に寄せて農学博士・阿久津喜作(元東京都農業試験場長)「純ベリー2」は、山口照男氏が長年にわたり選別を重ね、理想的なイチゴの新品種として固定化に成功し、このほど農水省に品種登録出願し受理されました。 驚いたことは、「純ベリー2」が、梅雨期や夏の高温多湿の畑の中で、灰色カビやダニなどの病害虫にさらされた中で生き残ったものを選別 交配し、ついに固定に成功したものであることです。悪環境や病害虫に強いので農薬に頼ることもなく、四季を通 じて開花結実し、安定した収量が得られる画期的な品種です。
(新聞「農民」2000.11.6付)
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[2000年11月]
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