“収入が半分になった”中国産の輸入激増 ネギ産地“大打撃”埼玉・深谷 知事が実態調査約束
ネギといえば「深谷ネギ」と言われるほど有名な埼玉県深谷市。県北部に位置し、県内最大の野菜産地です。市町村でネギの粗生産額が全国一位を占めるネギ産地が、日本の商社による中国からの“開発輸入”で大打撃を受けています。「深谷ネギ」や地域農業を守れという市ぐるみの取り組みが展開されています。埼玉農民連はその先頭に立って奮闘しています。 「収入が半分になり、生活費を維持するのがやっとだ」と沈痛な思いで語る南三郎さん(46)。深谷市人見地域でネギを一・六ヘクタール栽培している埼玉農民連の会員で、地域でも規模が大きい方です。南さんは「これまでは春ネギの価格が悪くても、秋ネギが良かったりということもあり、一年間で平均するとなんとかなっていた。ところが、最近は中国からの輸入ネギの影響で、まったく低価格になっている。農機具が壊れても、新しいものを買うこともできない」と言います。 奥さんのりえさんは「私たちが出したネギは、すぐに色が変わってしまうのに、中国の輸入ネギは変色しない。何か防腐剤などを使っているのではないかと声を大にして言いたい」と安全性の問題を指摘します。 市全体で十二億も販売高が減少年間三千万円の販売額を上げていたネギ農家が千二百万円になり、農協支所のネギの売上げが十四億円から七億円と半分になっています。市全体のネギの販売高も九九年度は前年比十二億円減の約五十二億円。取扱量はほとんど同じなのに、ネギ価格が大幅に下がったからです。九四年度に一キロ当たり六百八円だったのが、九九年度には二百五十四円、最近は二百円以下。「二百円以下ではやっていけない」(南さん)。深刻な事態です。 大手スーパーのイトーヨーカドーは十月十四、十五日の二日間、東京で目玉商品として「中国産長ねぎ一束78円」で売り出しました。低価格で売れる原因は輸入です。九〇年が六千トン、九四年八千トン、九七年九千トンと徐々に増え、九八年一万八千トン、九九年二万九千トンと急増しています。九九年の輸入の九八%を占めるのが中国ネギです。 深谷市産業振興部の松本高康部長らの話によると、商社が九四年に深谷市の種屋さんから買った種を改良し、中国での栽培を始めたと言います。 商社は、中国の食品加工企業などと契約して農民に作らせたり、あるいは集団農場と契約し、種や資材を持ち込み、技術者を派遣して大量に栽培しています。商社丸抱えで作られたネギが、“開発輸入”となって日本に送られてきます。 JA深谷市は八月下旬に中国のネギ産地を視察しました。これには市から松本部長も参加。松本部長は「農家の方からネギ輸入が増えていると言われていたので、現地を見ようと一緒に参加した。山東省青島から約百三十キロ離れた村を視察した。そこでは千ムー(一ムーは六・七アール)で栽培されていた」と話します。別の村では、深谷市全体のネギの作付面積(約八百ヘクタール)と同じくらいのところもあったそうです。 JAから参加した人の話によると、中国の農家の手取りは一キロ当たり約十四円という、日本と比べものにならない低い額です。それをねらって日本の商社は、中国でネギを作らせているのです。 市が対策予算三千万円を計上埼玉農民連は現地の農民の要求を聞き、市や県と交渉したり、セーフガード発動を求める請願を提出。深谷市議会では九月二十七日、県議会では十月十六日、請願が採択されました。 深谷市では「深谷ネギ」の宣伝のために三千万円の九月補正予算を組みました。「全国でも異例の予算」(松本部長)で、十一月二十五日と二十六日に東京でイベントを行い、宣伝することにしています。 県連は十月十九日、「埼玉農業を守るための緊急要請」を土屋義彦県知事に申し入れました。久保弘会長は、深谷ネギを県知事と県農林部の大橋達夫部長に届け、「埼玉農業を守ってほしい」と要望しました。 応対した大橋部長は、十一月に農協や市場と一緒になって外食産業や量販店に協力を求めて輸入農産物の実態を調査し、十二月に中間的なとりまとめを行う方向で、準備していることを明らかにしました。
(新聞「農民」2000.11.6付)
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[2000年11月]
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