砂漠化の中国・黄土高原第6回 冬橋本紘二〈写真・文〉
冬は零下三十度まで冷えこむ。男たちのほとんどは大同の町や炭坑に出稼ぎに出る。村は残された年寄りや女、子どもだけになる。家に閉じこもりの「穴熊生活」だ。家はヤオトン造りでオンドル式の「カン」があるので意外と温かい。この上で食事をし、布団を敷いて寝るという造りになっている。 冬の暮らしで一番辛いのは水汲みだ。 丘陵地にある村は、井戸はだいたい侵食谷の底か崖下の涸れた川原にある。凍結した坂道はツルツルと滑り、水を運ぶのに、一時間も二時間もかかるのだ。 寒さが緩んで結婚の季節に冬の楽しみはなんといっても「春節」だ。中国では正月は旧暦で祝う。春節の頃となると寒さも緩む。 県城の街では旧暦の一月一日から十五日まで毎日パレードがあり、大賑わいとなる。 村の正月のお祝いは、旧暦一月十五日の「元宵節」。夕方、村の端の川原に行って、正月を迎えられたお礼を述べ、膝まづき、三礼する。広場に戻っては龍の舞が夜遅くまで続く。村の正月では、雨を呼ぶと信仰されている「龍」が主役となるのだ。 また、春節の頃から春前は結婚の季節でもある。 ある山村の家に入ったら、美人の嫁さんが赤子を抱いていた。脇にはけっして美男子とはいえない中年になりかかった男が寄り添っていた。二人は昨年、結婚したのだという。美人の嫁さんを貰えた男がうらやましかった。 だが、なにかが違う雰囲気があった。貧しい村には、南の人口の多い四川省や雲南省などから買われてくる嫁がいる、と以前に聞いたことがあった。その嫁さんの顔を注意して見ると丸顔でこの地方の女性の顔つきとは違っていた。「実家はどこですか」と聞いたら、しばらく黙っていたが「四川省」と小さな声で言った。それからは他の村でも女性たちの顔を気をつけて見るようになったが、地元の顔つきとは違う嫁さんと子どもたちが山村では多く見うけられた。 日本の農村でも農家に嫁に来てくれる人がいなく、社会問題とさえなっているが、中国の農村でも同じだった。 貧しい村ほど結婚は困難だ。その費用も金がかかり、水のある盆地の村は一万元ほどだが、辺鄙な村は三万元もかかるという。その半分が結納金で、ほかに電気製品や自転車を買ってやり、家も建てるか修繕しなければならない。 農業年収五百元そこそこだから、その金を準備するのは苦労する。若い男たちは炭坑や建築現場に出稼ぎに行く。月五百元ほどになるから、五年から七年は働いて用意するのだという。 (おわり)
(新聞「農民」2000.10.30付)
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[2000年10月]
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