世界から流れ込む輸入食材のはけ口…検証 コンビニ弁当「こんなお弁当は私は食べませんね」「おいしそうに見えても、自分では買いたくないねぇ」。便利で手軽なコンビニ弁当。ところが弁当工場のパート労働者やコンビニ店オーナーからこんな言葉が飛び出してきます。スーパーに並ぶ外国産の農産物もさることながら、実はもっと素性のわからないものを食べさせられているのが加工食品や外食産業。売っている人が「食べたくない」というコンビニ弁当はどうやって、何から作られているのでしょうか?
食材どっぷり添加物漬け大商社や食品メーカー 驚異的低価格で輸入食品の“素性”従業員知らず「おふくろのごはん 栗ごはんと肉じゃが」「秋の味覚満載 しめじご飯弁当」――おいしそうなネーミングのコンビニ弁当の数々。 食材はどこから来るのでしょうか? それは工場の従業員にもコンビニのオーナーにもわかりません。 ほとんどの具材は調理済みで、ビニール袋に詰められて、冷凍で弁当工場に届くからです。工場では解凍して容器に詰めるだけ。最後の加熱をするものもありますが、素材はすべて加工・半加工済み、カット済みの「袋の味」ばかりです。 ダイエー系列のコンビニチェーン「ローソン」千駄ヶ谷店のオーナー、中村佳央さんは「食材調達をどこからするのか知っているのはたぶんコンビニ本部だけでしょう。ローソンの株主は丸紅、三菱商事ですから、当然、かれらが輸入農産物を手配しているはず」と言います。 大手コンビニ大手商社の系列もともと大手コンビニチェーンは、大商社やスーパーなどの系列企業。大商社は開発輸入が本業です。 現に丸紅、三菱をはじめすべての大商社が中国や東南アジアに食品加工の合弁企業を作っています。 和菜から洋菜まで、輸入しないものがないというぐらい、日本の大商社は世界から野菜や食材を買い集めています。「一年三百六十五日、いつでも旬」。北から南まで世界中のリレー出荷体制で日本に押し寄せる野菜。その最大のはけ口がコンビニ弁当や外食であることは疑いありません。 原価は?チキンカツ32円…コロッケ一個十四円、肉巻き十八円、チキンカツ三十二円…業者向けの惣菜や加工品は、食品メーカーや商社などによって大量 に開発輸入され、驚くような価格で流通しています。 「これは中小企業向けの値段。大手コンビニだと、二割以上安くなるのでは?」と言うのは、東京・月島で仕出しの弁当屋さんを営む尾崎斎さん。 半分売れれば「元が取れる」売店などの弁当は半分売れれば上々だといいます。半分しか売れなくても「元が取れる」生産原価で作っているのです。 コンビニ弁当の納入価格は七〇%。粗利益は三〇%前後ですが、ここからチェーン本社へのロイヤリティー(商標登録使用料や営業指導料など)四三%を引くと残りは一七%程度。さらに仕入れの約一割は廃棄してしまいますから、店舗の利益は七%。五百円の弁当を百個売ったとしても三千五百円にしかなりません。 “極安”の食材で作った弁当で、コンビニ本部は納入価格でもうけ、ロイヤリティーでももうける――。なるほど、コンビニ業界の業績が伸びるはずです。 具材、容器も消毒シュッ!空容器にシュッシュッ、袋から出した具材にも、具材をのせるバットにも、詰め終わってフタを閉める前にもシュッシュッ…。 「とにかく何にでも消毒のスプレーをするんですよ」と言うのは、売店などで売っている弁当の大規模工場でパートをしてきた有馬フタバさん。従業員の手袋も長靴も消毒、工場の設備もすべて消毒。「詰めるときにあれだけ消毒するのだから、当然、加工のときにもシュッシュッでしょう」と有馬さん。 安全や健康より儲け優先コンビニ弁当は「消費者の安全や健康より、工場や会社がいかにもうけるかという姿勢が見え見え」と言います。ローソンオーナーの中村さんも「もっとも怖いのは食中毒ですから、保存料や消毒剤は避けられないと思います。年間三百六十種類もの弁当が売り出されますが、おいしさのために味はどうしても濃くなります」と言います。 「コンビニ弁当は発ガン性や変異原性のある添加物の“デパート”。中には二十種類以上使われている弁当もあります。脂質とタンパク質も異常に多く、原材料も原産地も不明。こんなものを食べ続けたら、病気になってしまう」(石黒昌孝・農民連食品分析センター所長)。 長く食べたら病気になる…現に某大手コンビニチェーンの商品開発部の責任者が「食べる身になって考えるように」との“業務命令”で二年間、コンビニ弁当生活を続けさせられ、「こんなものを食べ続けていたのでは病気になる」と漏らしたというコンビニ弁当。 忙しさのなかで、コンビニ弁当を余儀なくさせられているのが実態ですが、「これでいいのか」――しっかり考えたいものです。
■コンビ二弁当工場の製造工程コンビニ弁当は、二十四時間体制で、常時百人から二百人ものパートが働く大規模な工場で、ベルトコンベアーの流れ作業で作られています。工場内は徹底した分業体制。炊飯、揚げ物、惣菜の仕上げ加工などはそれぞれ専門の作業部があり、従業員にも他の部門の作業内容はまったくわからない仕組み。
証言【1】 低賃金、みな腰痛埼玉県・大規模弁当工場で働いていた 有馬フタバさんお弁当があんなに安いのは、やはり人件費を切り詰めているからだと思います。従業員はほとんどがパートで年配の女性。年齢制限もあってなかなか他に仕事がなく、低賃金で、無権利状態でも、皆我慢して働いていました。弁当工場は常時十五〜十八度。なにしろベルトコンベアーが流れるのが早くって。立ちっぱなしで同じ作業を何時間も繰り返すため、腰痛や腱鞘炎など全員がどこか痛いところを抱えていて、あんまに通ったりコルセットをしたりして続けていました。私も腰痛になってやめました。
証言【2】 弁当廃棄毎日3回コンビニ「ローソン」加盟オーナー 中村佳央さんコンビニ業界は激しい競争にさらされています。普通、弁当、オニギリなどの米飯類の売上が高いほど、良い店だと言われています。とくに弁当類の新商品は、前の週の売上一位の弁当の一・五倍も売れるため、ローソンでは毎週、新商品が売り出されます。テレビCMでは手作りのイメージですが、弁当工場はオートマチック、ベルトコンベアーによる流れ作業で無機的。半導体工場のような姿で働き、外国人労働者もいて、実際のイメージとはかけ離れています。 私はコンビニ弁当は食べていません。味が似かよっているためと、毎日三回廃棄処理する弁当は、工業製品のイメージがあるからです。弁当に使われる添加物ですが、ローソンでは合成着色料を使わない商品を売り出した当初は二〜三割も売上が落ちました。栄養バランスの良い弁当も出しましたが、塩分の多い物のほうがよく売れました。これは消費者意識が高まらないと変わらないと思います。
証言【3】 国産ものが一番東京・月島で仕出し弁当屋経営30年 尾崎 斎さんいま、うちは築地市場の仲卸を中心に、全部で三百五十個の弁当を届けています。多い時は千個配達していましたから、今は経営は大変です。日替わりメニューを弁当箱に詰めて、事務所や会社など一個から多いところは三十個くらい配達し、昼過ぎに空の弁当箱を回収して回ります。ご飯は温かいものを食べてもらいたいので、人数がまとまった所には、ジャーで届けています。若い人が多い所には盛りをよくし、こわい(かたい)のが好きな所にはかために炊いてね。コンビニ弁当は脅威です。でもうちの弁当はコンビニ弁当よりうまいと言ってもらえると自負しています。野菜はお客さんの仲卸さんから安く仕入れ(時には押しつけられ)て、冷凍野菜は使わず、自分で料理しています。私を含めて四人で切り盛りしているので大変ですけど、サトイモだってハスだって国産のものと輸入の冷凍ものとでは歯ごたえがまったく違いますから、お客さんにはすぐ見破られてしまいます。メニューもその日の仕入れを見て決めます。容器を密閉しないので、野菜料理もたっぷり使えますし、食材に消毒スプレーする必要もありませんね。 お米は国産のお米を問屋さんから仕入れています。九三年の米パニックの時には値段が三倍になりましたが、仕方がないので国産米を使いつづけましたよ。やっぱりお米は日本のじゃなきゃ。農業がこのままでは、欲しくても手に入らなくなってしまうのではと心配しています。野菜だって味も形も、日本のは世界一ですね。
(新聞「農民」2000.10.30付)
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[2000年10月]
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