参院「非拘束名簿式」導入民主主義踏みにじる暴挙政権党の党略 “票横流し”“金権”選挙横行
自民、公明、保守の与党三党は十月三日、「来年の参院選挙は現行制度でいく」という全会派の合意をくつがえし、非拘束名簿式導入を柱とした公職選挙法改悪案を提出し、この臨時国会で成立をはかろうという暴挙にでました。
官僚組織や企業の“ぐるみ選挙”激化へ与党が強行しようとしている「非拘束名簿式」はどういうものでしょうか。現在の拘束名簿式は、政党名で投票し、各党が事前に準備した名簿順位にもとづき、得票におうじて議席を割り振ります。 ところが、非拘束名簿式は、投票は政党名でも、候補者個人名でもよく、その合計票で各党に議席が配分されます。事前に名簿順位を決めず、政党ごとに個人の票が多い順に当選が決まるというもの。党内で順位を高めるためには、他の候補者よりも個人名をたくさん書いてもらうことが必要になります。これだと、個人候補者と結びついた企業や官僚組織が、社員や家族、下請けなどを使う“金権ぐるみ選挙”は、いっそうはげしくなることは目に見えています。 現に自民党の久世前金融再生委員長による「党費立て替え」というヤミ献金問題が起き、国民からの大きな批判を受けています。
有名人の得票、横流しで別人が当選図を見てください。一九八〇年まで実施された参院選全国区制では、候補者が個人で立候補し、有権者は候補者名で投票、得票順に当選者を決定していました。一九八三年から実施された現行の拘束名簿式の比例代表選挙は、各政党が順位をつけて候補者名簿を作成、有権者は政党名で投票、各政党の得票に応じて比例配分で議席が決まります。当選者は各政党の名簿登載順になります。しかし、与党案の非拘束名簿式では、各政党が順位をつけない候補者の名簿を作成します。有権者は名簿に登載された候補者名か政党名で投票します。候補者名と政党名の得票を合計し、各政党に議席を配分します。各政党ごとに候補者の得票順に当選者を決めようというものです。 個人に投票した得票がその個人の所属する「政党の票」によみかえられます。つまり別の人の当選のために「横流し」される制度です。自民党は有名人を候補者に担ぎ出し、票の「横流し」ができるようにして、議席を増やそうとしています。
当落が逆転、自民に有利な選挙制度非拘束名簿式が導入されると、選挙結果はどうなるでしょうか。一九六八年に行われた参院選全国区で見てみましょう。当時、自民党の石原慎太郎氏(現東京都知事)は三百一万票でトップ当選しました。この結果 を非拘束名簿式で試算すると、石原氏一人の得票は三・九人分の議席になり、自民党は落選した五人が当選になります。その分、社会党、公明党、民社党、日本共産党、無所属の五人が落選となります。二十五位 で落選、六十位で当選。自民党にとっては、願がったりかなったりの結果をもたらします。
同様に参院選全国区の結果を試算すると、七一年には四人、七四年七人、七七年二人、八〇年三人と自民党は、いずれも「実力」以上に当選者を増やすことになります。 自民党は八二年、参院選挙に比例代表制を導入する時、「その選挙は依然として個人本位の選挙の色彩が濃厚にのこり、選挙のために巨額の資金を必要とし、結果的には個人本位の全国区の弊害を是正することにはならない」と非拘束名簿式に反対しました。自民党は来年の参院選で過半数割れを防ぐために、自民党に有利な選挙制度に変えようという党利党略から非拘束名簿式をねらっているのです。
“党利党略”野党無視し強行はかるつい七カ月前までは、自民党、公明党も参加する参院の各派が一致して「非拘束名簿式を導入しない」と合意していました。各会派代表の参加する「参議院選挙制度改革に関する協議会」は今年二月に「当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論を進める」という報告をだしました。協議会は昨年六月に設置され、九回にわたって協議した結果、まとめられたものです。 議長も各会派の代表が了承したものを、いとも簡単に投げ捨て、非拘束名簿式を審議する特別委員会を野党の反対にもかかわらず設置。しかも議長が勝手に電話帳方式で野党の委員を指名、さらに一方的に法案を提出するという、民主主義のイロハもなく参議院選挙制度の改悪を強行しようとしています。 野党四党は、与党の暴挙を糾弾し、撤回を求める共同声明を出すとともに、街頭でも訴えています。
(新聞「農民」2000.10.16付)
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[2000年10月]
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