「農民」記事データベース20001009-466-06

開発阻止スタート集会

“ごめんです”遺伝子組み換え稲

全国各地で運動展開へ


 遺伝子組み換え稲が日本国内でも栽培可能になり、私たちの主食である米までが遺伝子組み換えとなって食卓にのぼろうとしています。稲を遺伝子組み換えから守ろうと、九月二十日、「遺伝子組み換え稲阻止スタート集会」が開かれました。

 アジアを中心とした発展途上国には米を主食とする国々も多く、遺伝子組み換えによる多国籍企業の種子支配を許すなという声が沸き起こっています。この集会はフィリピン、インド、韓国など世界中で取り組まれている遺伝子組み換え稲反対の運動の一環に連なるもので、日本でもこの集会を皮切りに、十一月二十一日に東京で開かれる全国集会にむけて、全国各地でさまざまな取り組みが計画されています。

政府と企業で膨大な研究費

 集会では、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」代表の天笠啓佑さんが、遺伝子組み換え稲の開発状況を報告し、「世界的に遺伝子組み換え作物が後退を余儀なくされている一方、遺伝子組み換え稲は、政府が全面 テコ入れして企業と一体で開発を押し進めている。しかもそれは日本の農家・農業のためではない」と指摘。最近の開発の特徴として、“栄養がアップする”“味が良くなる”など消費者の受けを狙った開発が増えていることに警戒しなければならないとよびかけました。

(資料)遺伝子組み換え稲の主な開発状況(2000年8月現在)
(1)日本での作付が認められ、食品として申請予定の稲

三菱化学―耐病性稲(キヌヒカリ、農水省と共同開発)
モンサント―除草剤(ラウンドアップ)耐性稲(カリフォルニア米)
アベンティス―除草剤(バスタ)耐性稲(カリフォルニア米、ルイジアナ米)
オリノバ(日本たばこ産業と技術提携)―酒造用稲(コシヒカリ低タンパク米)

(2)もうすぐ日本での作付けが認められ、食品として申請されそうな稲
モンサント―除草剤(ラウンドアップ)耐性稲(祭り晴、愛知県農試と共同開発)
全農―ヒトラクトフェリン(免疫機能をアップさせる)遺伝子導入・鉄分増量 稲
(3)現在開発中の主な稲
三井化学―低アミロース稲(味覚改良)
     トウモロコシ遺伝子導入・光合成活性稲
三菱化学・殺虫性稲(BTライス)
(植物工学研究所)―グルタミン酵素遺伝子導入・光合成活性稲
北興化学工業―リジン高蓄積稲(栄養改良米)
      ―卜リプトファン高蓄積稲(栄養改良米・農水省と共同開発)
日産化学工業―イモチ病耐性稲(東大と共同開発)
岩手生物工学センター―除草剤(ビアラフォス)耐性稲
          ―イモチ病耐性稲
東京大学―鉄分欠乏土壌対策稲
農水省生物資源研―ジベレリン導入耐倒伏性稲
京都大学―大豆遺伝子導入稲(農水省と共同開発)
農水省―スーパーライス(トウモロコシ遺伝子導入・光合成活性稲)
アストラ・ゼネカ―ゴールデンライス(ビタミンA・鉄分増量 稲)
モンサント―収量増加稲
アグラシータス―除草剤耐性コシヒ力リ
ルイジアナ大学―卜ウモロコシのデンプン合成酵素遺伝子導入
《天笠啓佑氏作成資料より抜粋》

 このあと、名古屋大学理学部生物理学科の河田昌東さんが「遺伝子組み換え作物を基本から見直そう」というテーマで講演し、「安全な食と環境を考えるネットワーク」の伊庭みか子さんが海外での遺伝子組み換えをめぐる状況や運動を報告しました。

 各団体からの報告では、「愛知県では遺伝子組み換え稲を自治体がモンサントと共同開発している。県や国から膨大な研究費が出ているが、使い道は農業試験場とモンサントにまかされており、民意が反映されない」(中部よつば会)、「慣行農法の農家も含めて生産者のなかでどれだけ遺伝子組み換え稲は作らない、作らせない、という運動を積み上げていけるかが重要」(有機農業研究会)などの意見が出されました。

農業守る運動と合わせて…

 農民連食品分析センターの石黒昌孝所長は「農民連でも食品分析センターで遺伝子組み換えの分析をするなど、反対の運動を進めています。いま日本の稲作農家は米価が暴落し、続けていけない状況です。米の輸入をやめ、価格を保障して、農家が安心して農業を続けていけるような運動と、遺伝子組み換え反対の運動とをかみ合わせて、皆さんと共同して進めていきたい」と発言しました。

(新聞「農民」2000.10.9付)
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2000年10月

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