「農民」記事データベース20001009-466-01

高層ビル立ち並ぶ東京・新宿で

“待ってました”「豆腐の日」

100%国産大豆使用 新婦人の提案で店頭売り実現

 「こんにちはー。新婦人のお豆腐ある?」「こっちの一丁はお友達の分だから袋を分けてくれる?」――東京新婦人新宿支部が取り組む毎月第三土曜日の「新婦人豆腐の日」。午後二時、豆腐引換券を手に次から次へと新婦人会員がお豆腐屋さんを訪れ、豆腐を買っていきます。大豆は農民連の組合員が育てたもの。「お豆腐大好きなのに、遺伝子組み換え大豆が輸入されるようになって、安心して食べられなくなっていたの。本当にうれしい」。いま、新婦人にとっても農民連にとっても、まったく新しい「食」と「地域」を守る取り組みが始まっています。


 高層ビルが建ち並ぶ東京都新宿区。ところがちょっと駅から離れると、そこは住宅の密集する庶民の町です。少なくなったとはいえ商店街もお風呂屋さんもあります。

 「新婦人豆腐の日」の取り組みは、茨城県南農民組合の大豆を地域のお豆腐屋さんに買ってもらい(三十キロ八五七五円)、月一回、その大豆で豆腐を作ってもらうというもの。この取り組みを受け入れた「尾藤(びとう)豆腐店」は、奥さんが新宿新婦人の会員です。新婦人は「豆腐引換券」(予約券)を普及して、新婦人豆腐の日の二時から五時の間に豆腐を買いに行きます。一丁二百円。初回は七十丁作って数が足らなくなり、第二回は八十丁、三回目の十月は九十丁に増やす計画です。

豆の香りがする おいしいと好評

 第二回の九月十六日、お店の前は新婦人のお母さんたちで大賑わいです。先月は友達を誘って十人で来たという会員さんも。ニガリ一〇〇%、消泡剤も使わない国産大豆の豆腐は、「おいしい」「豆の香りがする」「何より安心して食べられるのがうれしい」と、会員さんにも大好評です。お豆腐屋さんの好意で油揚げのおまけまでついて、厚揚げやがんもどきも一緒に売れていきます。「この日をみんな本当に心待ちにしています。月一回でも、こういう日があることで心が豊かになるんですね」と班長の篠崎恵美子さんは話します。

食と地域を守る運動を結びつけ

 新婦人新宿支部が「日本の食と農を守ろう」と野菜やお米の産直を始めて十年、去年からは茨城県南農民組合とともに大豆畑トラストにも取り組んできました。これらの取り組みのなかで、大豆の自給率が三%しかないこと、遺伝子組み換え大豆が大量に輸入されていることを学び、会員のなかから「減反している水田の転作大豆をなんとか活用できないか」「農民連しょうゆ、手作りみそができるなら豆腐も欲しい」という声が上がりました。

 一方で地域を見回して見ると、大型店ばかりが繁盛して小さな商店が減っていく状況がありました。新宿支部長の末吉和さんは「年取っても住み続けられる町をつくりたい。そのためにも商店街を大切にしたいと思った」と言います。産直をしている人だけがおいしい物を食べて満足してしまうのではなく、地域を守る運動と食を守る運動をどう結びつけるか――このような模索が、「新婦人豆腐の日」に結びついていった、と末吉さん。

経営は大変だがやりがいがある

 豆腐を作って三十年という尾藤喜夫さん(57)は、「豆腐は高くは売れないものなので経営は大変だけど、もの作りの仕事は毎日が違うから、やり甲斐もあるし面白い」と言います。輸入大豆に比べて二倍から三倍も高い農民連大豆。その分豆腐の値段をバカ高くするわけにもいかず、尾藤さん一家の苦労に負う部分も多いこの取り組みです。工程も、労働時間も増えます。

 「今は病院や飲食店などへの搬入が売り上げの八割を占めていますが、こうした取り組みでもっと店頭売りが増えるといいですね」と言い、「豆腐の日はもっと華々しくノボリ旗もたててよ」と話してくれました。

 ぜひこの様子を生産者にも伝えたいと参加した県南農民組合の事務局長、小林恭子さんは、「これをきっかけに、豆腐の日には隣の八百屋さんでも農民連の野菜が買えるとか、農民連の豆腐もスーパーで引き換えられるとか、アイデア次第でもっともっと多彩な取り組みができそう」と、さっそく新しい抱負を話しています。

(満川)

(新聞「農民」2000.10.9付)
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2000年10月

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