農民連が初の全国対策交流会を開催鳥獣被害は死活問題「防除のキメ手は?!」各地の経験活発な論議
「中山間地でサルやイノシシ、シカなどによる農作物被害があとをたたない。一方では人間の無秩序な開発で動物の絶滅も心配されている。だが増え続ける鳥獣被害に生産者は泣き寝入りするしかないのか。この死活問題を何とかしようではないか」 全国農民連が呼びかけた初の鳥獣被害対策交流会が、八月二日〜三日、京都農民会館で開かれ、京都、大阪、兵庫、福井、愛知、東京の農民連の代表が参加しました。
自治体ぐるみで「兵庫・京都では雄シカがとれるが大阪は全面禁止だからこっちに来る。シカが田植えの苗をとるので、古い漁網を張ったら、その塩分をなめに来る。雄シカの角が網にかかって死ぬと住民が虐待だという」(大阪)「議会で農作物被害について発言すると議場には笑い声が出る」(愛知新城市)などの状況が各地から出されました。東京農民連の代表は「家のまわりの柿など、サルにやられて食べたこともない。中には仏壇にある供え物をビニール袋に入れて盗む奴もいる」という状況のなか、執念をもって地域に入り、ビラをまき、あきらめていた農家を組織して自治体と粘り強く交渉し、予算をつけさせた経験や、今年五月、新聞「農民」が報道した奥多摩町の自治体ぐるみで被害を減らした取り組みを詳しく報告しました。
注目される発言注目されたのが、福井県の元農業試験場主任研究員の岩泉俊雄氏の発言です。福井県では、サルの被害増加にともない、一九九一年から三年かけ、実態を調査、群数と棲息数を把握、効果的な防除策を講じてきた経過を概略、次のように報告しました。▽発信機をつけた生態調査の結果、オトナメスを頂点とした五十群三千頭と把握。▽栄養のある農作物を食べることで初産年齢が低下、繁殖率が増加し、毎年一〇〜一五%の個体数増加。 ▽出没当初のカキ・クリからやがてイモ類・果菜類からイネ・ムギなどまで被害が拡大した。 ▽防止策は「農作物を食べると痛いめにあうという恐怖感」を植え付けること。(1)農家自身がサルを見たら石を投げたり爆竹を鳴らして追い払うが、銃で射殺される恐怖はそのサルのみで群れには伝わらないので(2)捕獲し徹底して学習(お仕置き)させたうえで解放し、群れ全体に伝達、棲み分けを教える(3)その点、電気柵が効果的である。(4)適正頭数を把握しての駆除など。 現在、福井県ではサルは人里には出没せず、被害も減少しているといいます。
粘り強く運動を討論ではイノシシ、シカの棲息数、行動パターンの把握、電気柵、トタン板、ネットでの防護のほかに、農民自身がワナで捕獲できる狩猟免許取得についても意見が出されました。国の鳥獣被害担当は農水省農産園芸局植物防疫課。予算は「鳥獣害防止システム実証事業(拡充)」として、一九九五年から二〇〇〇年度まで、年一億一千万円を補助率二分の一で実施していることが分かりましたが、さらに延長と増額を実現する運動が緊急に求められています。 まとめでは(1)全国で百億円を越えるともいわれる被害があるのに、あまりにも被害農民の声が小さい。まず農民連が地域で呼びかけ、実態を調査し、自治体を巻き込んだ全国的な運動にしないと農家はだまって生産をやめてしまう(2)これからも必要に応じ、交流会を開く―などを確認しました。 (冨沢/新聞「農民」2000.8.28付)
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[2000年8月]
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