「農民」記事データベース20000807-459-09

学校給食は自校直営方式で子どもに豊かな食生活を…


 今、私は東京・日野市というかつて革新市政が二十数年も続いた自治体の小学校で、栄養士として仕事をしています。

 日野市の給食は、四十数年前、地域の人々の理解と協力のもとに小学校、中学校とも完全給食が実施され、中学校には一学年が利用できる食堂も有するという市民の宝としての給食が行われています。多摩地区の市町村にはまだ中学校給食が少ない現状のなかで、全校に栄養士が配置され、「保護者に信頼してもらえる学校給食を提供するのが自治体の責任」という行政のもと、調理員も栄養士も共に力を合わせて築いてきた給食です。

 しかし三年前の選挙によって市長が変わり、「経営感覚を生かす町づくり」に変わりました。同じ税金もトップが変わるとこんなにも使われ方が変わるのかと批判が続出しています。市民が築いた宝としての給食を民間委託にし、利潤のための給食にしてしまうこと、さらには公教育としての責任を放棄し、給食にとってもっとも大切な安全性を軽くみている方針に怒っている日々です。

 学校給食の民間委託を推進しようとするとき、「調理員が自治体から民間に移るだけ」「作る人が変わるだけで何の心配もない」と、どの自治体も言います。本当にそれだけでしょうか。

 たとえば今、日野市は地場野菜を給食に取り入れていますが、これが将来にわたって安心だと言える保証はありません。委託を受けるおおもとの日本給食サービス協会は、学校給食の委託推進マニュアルで、「冷凍食品の活用と一括購入をする。複雑な献立をやめる。食の国際化。厨房器の活用、作り手の負担を考えない強化磁器の使用はやめさせる」などと提言しているのです。

 国民の七二%が輸入農産物に不安を抱いています。「日本の子どもには、日本の土地で、地域で穫れた生産物を」は、今もっとも重要なことです。農と食、健康、子どもに生きる力を学ぶ教材としその給食を作るため、食の専門家として、調理員も栄養職員も共同で技術を継承していくことができるのも自校直営(それぞれの学校で自治体の専門職員が調理する方式)の給食システムなのです。

 学校給食を単に食べさせればよいと思っていると、安上がり論に惑わされてしまいます。コンビニで食事を買う時代、いま大切なことは、子どもたちを含めて親の食生活がどうなっているのか、食文化をどう豊かにしていくのか、一人一人の親が子どもの未来や心と体の健康について考えてみることが大切な時代だなぁと思うと同時に、ますます学校給食の役割が高まってきていることを痛感している昨今です。

(東京都教職員組合栄養職員部会副部長 安藤恵子)

(新聞「農民」2000.8.7付)
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2000年8月

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