『遺伝子組み換え』考える世界市民サミット主食のコメ、乗っ取られる危険種子独占狙う多国籍企業“コメは、小麦、トウモロコシとならぶ世界の人々の重要な主食。そのコメがいま、遺伝子組み換え技術の利用によってバイテク・ジャイアント(多国籍企業)に乗っ取られる寸前にある”――七月十四・十五日、「遺伝子組み換え作物・食品を考える世界市民サミット」(「食料・農業・食の安全に関する生協懇談会」主催」)に参加したマレーシア、フィリピン、オーストラリアなどのアジア諸国の代表がこう報告し、同サミットでは遺伝子組み換えイネの問題が集中的に取り上げられ、活発な議論が行われました。
アジア諸国の代表が訴え失われているイネの多様性「遺伝子組み換えイネは世界を養えるか――アジアの農村からの視点」と題して基調講演を行ったマレーシアの女性サロジニ・レンガムさん(農薬行動ネットワーク・アジア太平洋事務局長)は、アジアにおける種子の企業支配について報告。「アジア全体で十四万種のイネの品種があったが、八〇年代の“緑の革命”から現在の“GM(=遺伝子組み換え)革命”にかけてイネの多様性がどんどん失われている。イネは自然交配で自家採取できるため、企業はこれまで手を出したがらなかったが、GMによって種子支配が可能になり、世界の巨大遺伝子企業五社がイネの種子を独占している」と述べました。多国籍企業によるイネの品種開発、GM特許の取得状況は、九七年現在、デュポン・パイオニアハイブレッド社(アメリカ)が二十件、モンサント社(アメリカ)が九件、ノバヴァーティ社(スイス)五件、アヴェンティス社(仏)四件、アストラゼネカ社(英)が三件となっており、これら五社で世界中のイネの特許の二三%を占めています。
“南の農民救う”の大宣伝の蔭でまた、アメリカのロニー・カミンズさん(遺伝子組み換え反対世界同時行動コーディネーター)も基調講演で、「我々は、遺伝子組み換えの第一波である食品の分野では勝利を収めつつあるが、それはGM樹木、GM魚、GM臓器(ブタで人間の臓器をつくるなど)といったもっと大きな第二波の兆候にすぎない。ごく一部の多国籍企業が世界を支配するような社会は民主主義ではない。皆で力をあわせよう」と訴え、大きな反響を呼びました。分科会では、「遺伝子組み換えライスの開発の現状と企業支配」をめぐって、フィリピンの女性ネス・ダニョさん(シーライス事務局長)が、「南の貧しい農民を救うため」「世界の飢餓や栄養不足の解決策」と称して企業が大宣伝している「第二世代」の組み換え、ゴールデンライス(ビタミンAを多く含んだ米)は、決して南の農民の希望の星ではなく、“農業の心臓”である種子を一握りの巨大企業が独占しようとするものだと厳しく批判、イネの種子に知的所有権(特許)を適用することに反対する運動を呼びかけました。
除草剤と種子のセット販売「日本におけるイネの育種とイネゲノムの動向」について報告した北海道大学農学研究科の久野秀二氏は、日本では、公的機関が中心にイネの育種を進めてきたが、最近は多国籍企業が一斉に参入してきていることは「看過できない」と指摘。すでにアメリカで環境放出試験が認可されているGMイネは九十五品種にものぼり、そのうち七十二品種が除草剤耐性イネであり、多くの機能性の付与をうたっても、結局は除草剤と種子のセット販売が主要な狙いであることを示しています。また米は、アジアでは政治的、経済的、文化的、宗教的にも重要な柱であるとして、今秋十一月には、イネのGM化と農薬使用に反対し、生物の多様性を守るアジア民衆キャラバンを起点にアジア各地を回り、最後にフィリピンで大集会を開き、タネの交換会を行うと発表、日本からの参加も呼びかけられました。 (塚平)
(新聞「農民」2000.8.7付)
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[2000年8月]
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