江戸時代過酷な圧政に抗して立ち上がる農民群像描く映画『郡上一揆』近く完成神山征二郎監督に聞く江戸時代、美濃国の郡上藩でおきた農民一揆を描く映画「郡上一揆」が、三月から五月で撮影も終わり、編集の段階に入っています。編集作業のお忙しい合間を縫ってこの映画にかける想いをメガホンをとった神山征二郎監督に聞きました。(冨沢)
現代にも通じる迫力・感動岐阜県民が資金協力「僕は農家に生まれ、小さい時から郡上一揆のことは聞かされてきました。彼らの行動を見ると、当時の農民が国の財政を支える納税者として誇りをもっていたのではないかと考えるようになったんです」と岐阜市出身の神山監督。それだけに、彼らがどんな思いで一揆に立ち上がったのかを映画にするのが、農民の子として生まれた者の使命ではないかと、助監督のころから構想をもっていたそうですが「農業、まして一揆というと映画会社は引いてしまうんです。金はかかるが儲からないと」。 それから三十数年たち、農業は深刻な事態に陥っています。「今こそ、あの知恵と計画性、バイタリティと粘り強さが必要なのではないか」と、昨年、映画化を発表しましたが延期に。資金不足のためでした。このとき岐阜県の人々が「映画『郡上一揆』支援の会」を作り、一口五万円の出資金を大きく集めたことで、ようやく今年三月撮影に入れました。 「貧しい一揆の農民たちは、闘争資金を四年間で約千二百両、いまの金なら一億二千万円以上も集めています。彼らはその資金で何回も会議をもち作戦を練り、代表を江戸に送り、代表は死を覚悟して駕篭訴、箱訴で幕府に訴えているのです。今でいう訴訟闘争ですよ」と語る監督は、一揆をたたかった美濃国の農民と、映画化にかける岐阜県民「支援の会」の心意気とを重ね合わせているようでした。
群衆シーンには地元農民も出演撮影中のエピソードをお聞きすると、「この映画には延べ三千五百人のエキストラが出演していますが、群衆場面で千人が本物の一揆みたいに怒ったり笑ったりして迫真の演技をしています。プロの俳優たちの熱演とともに迫力ありますよ。ぜひ観てください」と眼を輝かせていました。
上映が待ち遠しい地元の期待一方、地元の表情を岐阜農民連の岩田昭さんが伝えてきています。撮影場所になった郡上郡白鳥町白山神社界隈で見物していたという喫茶店の女主人は「千人の人たちが、昔の姿になって、道の駅の広場から白山神社の方へ移動するのを見ているだけで感動しました」。 農民に扮装して参加した年老いた農民は「小雪の降るなか、監督の指示であれこれやっているうちに、命がけで一揆をたたかってる百姓の気持ちになっちまった」と興奮ぎみ。 さらに「昔は米をむちゃくちゃなやり方で取り上げようとして一揆になったが、いまは減反や安値で農業がだめになった。いまの百姓だってあのようにやらなあかんな」と語る人など、町はいまだ興奮冷めやらず、あちこちで映画の話で持ち切り。公開が待ち遠しいようだといいます。
今秋から順次上映
神山監督から「農民」読者にメッセージ「当時の農民の心意気や知恵を現代と重ね合わせ、今の農業のあり方、農民の存在の重要性を念頭に置いて作りました。そういう意味で、これからも農民連とも連帯していきたいので、多くの人に観ていただきたい。恰好いい農民像をお見せしますよ」
郡上一揆 放漫経営で財政を逼迫させた郡上藩が、増税のために年貢の収集方法を変えようとしたのを、納税者である農民が、従来通りにして欲しいと訴えたもの。これにたいし藩は一部幕閣への工作を通じて懐柔と弾圧で対応しました。 (新聞「農民」2000.8.7付)
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[2000年8月]
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