アメリカの遺伝子組み換え大豆畑除草剤使用増え収量減った米科学者が衝撃のレポート「雑草から開放され、コストダウンになり、収量は増える」「農薬の使用量は減って、環境にやさしい」――こんな夢の技術をうたい文句に、短期間に全米大豆作付面積の六割を占めるまでに広がった遺伝子組み換え除草剤耐性ラウンドアップレディ大豆(RR大豆)。ところが、このRR大豆、実際には宣伝とは逆であるという専門家による本格的な調査結果が相次いで公表され、大きな反響を呼んでいます。その一つ「ベンブルックリポート」を翻訳してまとめた名古屋大学理学部の河田昌東助手(分子生物学)は、七月四日に東京都内で講演し、その内容を詳しく紹介しました。(塚平広志)
このリポートをまとめたのは、アメリカの病虫害専門家で元米国科学アカデミー農業委員会委員長のチャールズ・ベンブルック氏。 調査は、一九九八年に八つの州立大学で行われた八千二百サンプル余の大豆の試験栽培の結果を科学的に分析。「ラウンドアップレディ大豆の収量低下の程度とその結果」として、昨年夏に公表されました。 それによると、在来種(非組み換え)と組み換え種を比較すると、平均収量は八州のうち七州で在来種の方が高く、一エーカー(〇・四ヘクタール)当たりの収穫量は、組み換え種の方が七%低い。多収量の五品種を選んで比較すると、組み換え種の方が最大約一一%も低いという結果が出ています。 また、種苗会社別の調査によると、ミネソタ州の十四のケースで平均一三・一%RR種が減収、そのうち三つのケースの収量低下は二〇%を超えています。 こうした収量低下は、農場レベルで経済的にも大きな影響を与えています。八つの州のうち四州で、RR大豆の栽培を選んだ農家は、一エーカー当たり、総収入の一〇%を超える追加コスト(種子代、除草剤代)の損害を受けています。
除草剤に依存し最大で十倍増RR大豆を作れば除草剤の使用量が減ると、モンサント社は宣伝してきましたが、農場での状況を調べると、組み換え大豆を植えなかった当時と比べ一エーカー当たり二倍から五倍の除草剤を使用。とくに輪作などで総合的雑草対策を行っている農家に比べ十倍を超えているとし、使用量は減るどころか増加傾向にあると結論づけています。除草剤の使用が増えている理由として、メーカーの激しい売り込みと同時に(1)除草剤耐性種だということで除草剤に依存し、安易に使う(2)雑草に除草剤耐性ができて散布回数を増やしたり、より強力なものを使う傾向にあるとしています。 講演のなかで河田氏は、ことし五月発表のアメリカ農務省の農薬使用量を調べると、農薬の使用がここ五年大幅に増え、なかでもモンサント社のラウンドアップの使用量が他社の農薬を押し退けて五倍余という飛躍的な伸びを示している実態を明らかにしました。 また、河田氏は、厚生省がことし四月から除草剤ラウンドアップの主成分「グリホサート」大豆の残留基準値を五倍も緩めたことは除草剤の使用量が増えて、日本が輸入するRR大豆に高濃度のグリホサートが残留しているためで、モンサントや米政府の要請に応えたものだと指摘しました。 日本人が食べている大豆製品の半分以上は、アメリカから輸入するRR大豆ですが、遺伝子組み換え食品としての安全性に疑問があると同時に残留する高濃度の農薬を含んでいる点でも重大な問題です。
(新聞「農民」2000.7.24・31付)
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[2000年7月]
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