最悪の被害招いた雪印中毒事件「安全より効率優先」の体質ずさんな管理・情報隠し酪農民へのツケ回し許せぬ
「雪印乳業」大阪工場で六月下旬に製造された「雪印低脂肪乳」と「雪印毎日骨太」「雪印カルパワー」を飲んだ人が、嘔吐や下痢など食中毒を起こしています。発症者は七月六日時点で一万二千人(入院百五十九人)を超え、一九四八年の食品衛生法施行以来、最悪の規模です。生産農家からは品質を口実に猛烈に買いたたく一方で、安全性を無視して利潤を追求する巨大乳業メーカーの体質が、次々と浮き彫りになっています。 食中毒の原因は黄色ブドウ球菌。原料を一時貯蔵する予備タンクのバルブ内部が乳固形分の汚れで覆われ、黄色ブドウ球菌が繁殖していました。このバルブとバルブにつながる仮設パイプを、雪印は「仮設」を名目にHACCP(ハサップ)承認外の無届けで設置。「仮の設備」であるため、自動洗浄につながず、社内マニュアルで「週一回分解・手洗浄」と定めるだけで済ませていました。しかし実際にはマニュアルは守られず、六月二日の洗浄後三週間、二十三日までまったく洗浄を怠っていました。現場担当者は大阪府警の事情聴取に、「マニュアルの内容を知らなかった」「知ってはいたが守ったことがない」と証言するなど、効率優先、安全軽視の常態化が今回の食中毒を招く根本原因になりました。
くりかえされた「ウソ」発表また、食中毒が発覚してからの雪印の不誠実極まりない対応も大きな批判を呼んでいます。虚偽発表、証拠隠滅、前言撤回を繰り返し、原因となった同じバルブを通って製造された「カルパワー」「毎日骨太」を危険を知りながら回収しないでやりすごそうとするなど悪質で、大阪市は異例の「営業禁止」の処分を下しました。食中毒を起こした大阪工場のほかに、日野工場でも手抜きが判明し、スーパー、コンビニなど全国の小売り店舗でいっせいに雪印製品の撤去・返品が行われています。五日には小岩井乳業も「酸味がする」との苦情で製品を回収。地域によっては学校給食からも雪印の牛乳が回収され、食中毒の影響は雪印だけに止まらず、牛乳・乳製品全体の信頼をも揺るがしかねない状況です。一部マスコミによると、このまま消費減退が長引くようだと「本格的な生産調整も懸念せざるをえない」(中央酪農会議)というコメントもあり、最終的なツケを生産農民に回す動きにも監視が必要です。
利潤追求の一方で買いたたき雪印乳業は、国内シェア三〇%を占める最大手の乳業メーカー。利潤第一に乳製品の輸入を押し進める一方、酪農農家からの生乳出荷には、細菌数、体細胞数、乳脂肪分、無脂乳固形分と数々の厳しい基準を設け容赦ない買い叩きを行いながら、自社工場で黄色ブドウ球菌を混入するいい加減さは、国民世論の厳しい批判をまぬがれません。
“氷山の一角だ”明治乳業争議団・伊藤満副団長の話雪印大阪工場の食中毒事件は、国民に安全な牛乳・乳製品を供給する責務を負った乳業会社に、あってはならないことです。しかし残念ながら、この事件は氷山の一角にすぎません。明乳においても、表沙汰になる前に危ない商品を買い占めるということなどは、日常茶飯に行われています。いま生産現場では、正規社員一人に対して、臨時雇用三人の割合で働いています。この割合は、一昔前までは逆でした。社員教育はおろそかになり、こういうところに安全チェックがないがしろにされる原因があります。また、保健所の検査もなあなあです。変な話ですが、明乳はマクドナルドのシェイクの濃縮原料を作っていますが、マクドナルドの検査の方がよっぽど厳しいのが現状です。 労働者は、こうしたことを知りつつも、私たちのように差別されるので見て見ぬふりをさせられています。私たちがたたかっている賃金・昇格差別撤廃の裁判闘争と、乳業会社を食と健康を担うまともな食品企業に立ち戻らせることは、共通する課題です。
(新聞「農民」2000.7.17付)
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[2000年7月]
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