許せぬ賃金差別・人権侵害不屈の裁判闘争26年全税関労組が決起集会
一千人が参加“早期解決を!”国民本位の税関行政の確立をめざし、コメをはじめ農畜産物の輸入自由化に一貫して反対し、輸入食品の安全問題で港見学の案内など、国民とともに歩んでいる全税関労働組合(全税関)――大蔵省・税関当局の憲法や人間の尊厳を踏みにじる差別・弾圧の攻撃に対して一歩も引かず、「賃金差別裁判」を二十六年間たたかい続けています。六月九日には、長期裁判に勝利し、大蔵省に全面的な解決を迫る決起集会が東京・千代田公会堂で開かれ、千人が参加しました。 三百万部のベストセラーになっている山崎豊子さん著『沈まぬ太陽』。その主人公のモデルである元日航労組委員長の小倉寛太郎さんが講演。小倉さんは自らの体験を語り、懐柔や恐喝に屈しないでまっとうな人間として生き、不当な差別や攻撃に対してたたかうことの尊さを強調、参加者を勇気づけました。 全税関は一九四七年に結成されました。歴史的な六〇年日米安保条約反対闘争の広がりをおそれた支配層は、労働運動や民主運動に攻撃を加えてきました。全税関に対しても六一年十二月に神戸支部の組合役員三人を懲戒解雇し、組合つぶしの攻撃が全国の税関職場に吹き荒れ始めました。 それ以来、大蔵省・税関当局は四十年余りにわたって、組合員として、人間として当然の行為を犯罪のように扱い、分裂・差別を行っています。その実態はすさまじいものです(別項)。
卑劣な当局側の手口を糾弾これに対して東京、横浜、大阪、神戸の四支部と四百三十人の組合員が七四年六月に四億五千万円の損害賠償と慰謝料を請求する「税関賃金差別裁判」を提訴。国家公務員が国を相手に初の裁判を起こしたのです。裁判のなかで、当局が作成した差別の重要な証拠となった秘密文書や謀議文書が相次いで暴露されたり、元東京税関幹部の告発文書が公表され、不当行為を証明するものとして裁判でも証拠に採用されています。 告発文を発表した元東京税関幹部の野村光司氏は『週刊エコノミスト』(98年6月)で「管理職を中心に、全税関潰しと第二組合結成の方法が練られて実行された。必要な工作費は無制限に出し、不正経理によって捻出される。管理職会議では各課別に、旧労(全税関)脱退人数と新労加入人数が管理者の成績として発表される。旧労組合員には一切の利益、便宜をはかってはならない。旧労に残るかぎり、人生は絶望であることを自ら悟らしめよ」などと差別攻撃の体験をもとに暴露しています。
農民連がオニギリで励ます九二年に神戸地裁(不当判決)、大阪地裁(勝利判決)、横浜地裁(不当判決)と相次いで判決が出されました。九九年に横浜事案が東京高裁で逆転勝利判決、今年三月に東京事案が結審し、判決は年内に予想されています。他の三支部の事案は最高裁で争われています。長期裁判のため定年退職した原告は百七十五人、亡くなった原告は二十四人います。一刻も早い解決が求められています。「沈まぬ太陽では、差別が航空機事故の要因につながりました。大蔵省の差別は、国民犠牲につながります」と日航労組OBの土井清さんが支援のあいさつを寄せていますが、賃金差別裁判を勝利させることは、国民的な課題といえます。 農民連はおにぎり千個(茨城産・コシヒカリ)と河内晩柑(熊本産)を提供、小林節夫代表常任委員が激励のあいさつをしました。
ひどい組合への差別の実態組合脱退を強要岡俊行さんの場合岡さんは一九六五年十月、勤務時間中に課長に呼ばれ、「全税関労組を辞めないと役付になれない」と執拗に脱退をせまられ、さらに飲み屋に誘われ、そこでも脱退を強要され、やむなく組合を抜ける旨答えてしまいました。翌日、課長のところにいくと脱退届けが用意されており、署名した数日後、税関本部の輸入部長に呼ばれ、激励されました。このときは出張扱いを受けています。岡さんはその一週間後、「一緒にやってきた仲間を裏切ることになる」と思い返し、脱退届けを撤回しました。 岡部丈太郎さんの場合 岡部さんの実家・青森県弘前市に住む父親の元に一九六七年十二月、課長から「重大な話があるので至急上京するように」との命令口調の手紙が届きました。父は病弱で、母も脳血栓で入院中で、やむなく兄が代理として上京。兄は課長から全税関への非難、中傷を聞かされ、「ぜひ弟さんを脱退させてほしい」と言われました。兄は、「税関とはこんなつまらないことで役所に呼び出すのか」と驚くほど卑劣なやり方です。
冠婚葬祭に差別上山興士さんの場合上山さんの父が一九七一年五月に亡くなり、葬儀を終えて職場に出勤した上山さんに第二組合の分会長がきて「今度から職場の香典は出さないことになりましたから」と伝えてきました。今まで普通にやっていたのを、上山さんのときからやめてしまう。税関とは関係のない亡くなった父親にまで差別扱いをする非人間的な当局の仕打ちです。 小山喜弘さんの場合 小山さんは一九六八年五月に結婚。職場の上司と先輩は、結婚式当日に「用事があるから」と参加を断ってきました。当時、全税関組合員の冠婚葬祭には、上司が参加していないという噂がありました。「人間の喜びや悲しみまで無視する官のやり方に非常な怒りを覚えた」という小山さん。両親からは「職場で何か悪いことをしたのか」と心配されました。
職場の会話盗聴大木多恵子さんの場合退庁後、忘れ物を取りに戻ったら、課長と係長、第二組合の人が三人でテープを聞いていました。それは密かに録音された組合員の勤務中の会話です。盗聴までしてスパイ行為を行う当局のやり方です。
(新聞「農民」2000.7.3付)
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[2000年7月]
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