「農民」記事データベース20000626-454-03

千葉・北総

水膨れ用水事業に“待った”

地元農家から批判総額で2.4倍、500億円に

 「高い水利料は、間接的に百姓をやめろと言っているようなもの」「農産物価格を見合うように安定させろ」――六月十日、千葉県農民連が事務局になっている「北総中央用水事業をよく考える会」が開いた説明会。国・県・市から出向いた役人に対し、集まった約二十人の受益農家から厳しい言葉が浴びせられました。同会会長の石井健蔵さんは、「農水省はいつから水の押し売り屋になったんだ。農業を育てるのが本来の役目じゃないのか」と憤ります。


 利根川の水を北総台地の八街市、富里町など五市二町に引く北総中央用水事業は、工期(九七年)を過ぎてもまだ完成せず、計画変更の準備が進められています。そうしたなかで、農家から「対象からはずしてほしい」「計画の中止を」といった声があがっています。

 スイカのハウスが並ぶ八街市住野地区。スイカと産直野菜を二・三ヘクタール作る長谷部幸夫さん(41)は「きれいで安定的な水が安く使えれば」と言います。同地区は、徳川幕府の馬の放牧地を明治になって開墾した土地。水の便が悪く、一九六六年、住野土地改良区(組合員四十五人)は団体営の揚水機場を二機完成させました。「当時は、陸稲を作るのが目的だった」という長谷部さんは、父親が必死に井戸を掘っていた姿を覚えています。

 揚水機は、作目が変わった今も現役。十アール当り二千五百円の水利料で共同管理されています。「よく考える会」の調べでは、近隣の用水の賦課金は、三千円〜四千五百円と割高で、住野土地改良区の小山雅勝組合長は、「水の需要は当時と違って減っている。用水を引くより、ポンプの修理や維持管理に助成してくれた方が、生きた金になる」と言います。

 全国的にムダが指摘されている公共事業。工期が延びて、事業費がふくらむのが当たり前になっています。

 北総中央用水事業も例外ではありません。当初計画の二百十億円の総事業費は、約五百億円、二・四倍にふくらむ見込みです。

 農水省は「物価上昇分及び工法変更等によるもの」と説明していますが、とうてい納得できるものではありません。さらに、九九年度に工事を受注した日本国土開発(株)など大手ゼネコン五社は、予定価格の九五〜九七%という“談合価格”で落札していたことが明らかになりました。

 「豊かな農地があるにもかかわらず、食料自給率を落としてきた日本。農水省は、百姓をやれる環境を整えるべきです。子どもらにこの土地を守っていってもらうためにも、新たな借金を背負いたくはありません」と語る長谷部さん。農水省は、こういう声に耳を傾けるべきです。

(新聞「農民」2000.6.26付)
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2000年6月

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