「農民」記事データベース20000612-452-01

総選挙公示へ

政治を変え、まともな農政実現するチャンスです

農の現場からの発言

 六月二日、衆議院が解散されました。十三日公示、二十五日投票で行われる総選挙。二十一世紀を目前に農の現場の声を追いました。


まじめに働く農家が報われない…

自民支持、もうやめた

600頭の肥育牛経営する牧場主 渋沢萬吉さん(埼玉県)

直らぬ金権体質

 「規模拡大で牛肉の輸入自由化に対抗してきたが、自民党農政にはもうついていけない。牛肉の自由化には絶対反対だ。『浮世のバカは、寝ずに働く』と昔の人は言ったものだが、とんでもない。まじめに働く農家が報われる政治をしてもらわなきゃ困る」。

 こう力説するのは、長年自民党を支持してきた渋沢萬吉さん(69)です。埼玉県妻沼町と岩手県西根町の二十ヘクタールを超える農地で、約六百頭の肥育牛経営をする農事組合法人・渋沢牧場の理事長。気さくな語り口のなかにも、「正しいものは正しい」という強い信念がうかがえます。

 妻沼町の事務所の壁には友人から贈られた歴代内閣総理大臣の直筆の色紙がズラリ。しかし今度の総選挙では、「自民党は一度政権を降りないと、献金をたかる体質は直らない」と、日本共産党を応援することにしました。

自由化で大赤字に

 渋沢さんの生家は、父親の代まで農耕馬を貸して賃料をとる馬主でした。トラクターの普及によって、酪農を始め、やがて牛の肥育も手がけるようになりました。ところが、八八年の牛肉の輸入自由化。「自由化前に一キロ七百円していたホルスの枝肉が、四百五十円にまで下がった。牛一頭につき、十五〜二十万円のお金を貼って出荷するようなもの。えらい赤字を出した」と憤ります。

 事務所のまわりには、鉄筋の肥育用の牛舎、パイプラインを引いた搾乳牛舎、馬も飼っていた古い木造の畜舎など、合わせれば千頭も入りそうな畜舎群。しかし今、それらはすべて空いています。この土地を売却し町内に別の牛舎を建て、西根町の牧場とともに経営を和牛の肥育にしぼる計画だそうです。

今度は共産党に

 「いま肉に限らず、米も野菜も輸入で価格が安くて農家の自民党離れがかなり進んでいるんじゃないか」。渋沢さんが、農民連と知り合い、加入したのは、つい先月のこと。西根町の牛舎に二百万円も固定資産税がかけられ、五年も悩み続けていた時です。「『しんぶん赤旗』で農民連が固定資産税の引き下げにとりくんでいるってのを見て、電話したんだ。てっきり浦和か大宮にあると思ったんだが、事務所が江南町だっていうんで驚いたよ。そしたら、松本事務局長さんがさっそく町役場に電話してくれ、解決の糸口がつかめた」。

 明るく話す渋沢さんは、農民連の援助で、固定資産評価委員会に審査申出書を提出しました。

 「数合わせをして何でも通す政党じゃ日本の国はよくならない。信念をもった日本共産党の先生にがんばってもらわないと」。麦秋を渡る風に吹っ切れたように、渋沢さんは語りました。


森首相の地元石川でも不評

中村 厳(石川農民連幹事)

 森首相の生家から二、三百メートルしか離れていない石川県根上町下ノ江という集落に住み、野菜を中心に作っています。母親は森首相の祖父・喜平さんの世話になって中村家に嫁いできました。

 私は森首相の三歳下ですが、考え方も生き方もまったく正反対です。地元から総理大臣が生まれれば盛大に祝賀会を開かれるはずですが、とても静かでした。前首相の病気ということもあったと思いますが。

 町の有力者の間では全町をあげて応援しなければという動きもありました。しかし、「神の国」発言以来、ある集落の森首相後援会が決起集会を開きましたが、ほとんど集まらない状況でした。就任当初は森首相のポスターが各家の玄関内に貼ってありましたが、「神の国」発言後、はがす家が増えています。

 私自身は、小さい時にイモ掘りをして、その残ったクズを取っていく人を見て戦争の惨めさを感じ、戦争は嫌いになりました。ですから時代錯誤の考えを持つような人は、どのような閣僚の人であろうと許せないし、森首相は即刻退陣してもらいたいと思います。


みかん農家の声聞いてくれた共産党

二宮 浩(みかん農家、愛媛農民連副委員長)

 みかんから始まった記録的、そして屈辱的な価格暴落は伊予柑をも大きく呑み込み、農家も農協も翻弄され、対策など全く立たない状態に追い込まれました。

 こんな時、四月九日に私の住んでいる愛媛の保内町で二百三十人参加したみかんシンポジウムが愛媛農民連、愛媛産直協同センター、八西農民組合、日本共産党の共催で開催されました。

 この時、パネラーとして春名直章衆院議員は堂々と、しかも力強く意見を発表されました。そして国会の場でも、「産地は崩壊の危機だ」と訴え、「現状を良く調査し、対策を講じなければならない」という農水大臣の答弁を引き出し、五月十七日には農水省交渉となりました。直接、農水大臣との交渉ができたのも春名議員のお世話です。

 みかん農家の窮状を親身になって現地に出かけられ、調査し、政治的解決策を間髪も入れず行動に移すなど、エネルギッシュで行動派、理論家の知恵者であるからこそ、出来る技ではと感じ入っています。このような春名さんを心から推薦します。


価格保障どうしても必要

山田昭男(福島・須賀川農民連副会長)

 タバコは他の作物と比べて価格が安定しているといわれるが、福島県内の生産者数は、毎年百人以上減り続け、今は二千人余です。八七年の輸入関税の撤廃以来、外国タバコのシェアは三割に達し、日本たばこ産業は、他の食品などへ事業を多角化する一方、支所を閉鎖するなどの合理化を進めています。

 米も野菜も輸入で価格が暴落し、農家は「やっていけない」と頭を抱えています。農産物の価格保障をすることが、どうしても必要です。(タバコ専業)


激増する輸入にストップを

青木 正(茨城県西産直センターレタス部長)

 今年はレタスが豊作でした。農民にとって、豊作はうれしいものです。

 ところが、市場に出荷したら、一箱十六個入りで三百円という超安値でした。ダンボール箱代と運賃分しかならず、私の賃金はゼロです。千円にならないと、農家はやっていけません。

 市場には輸入農産物が大量に入っています。輸入品が値段を低く抑えています。せめて輸入を制限してもらいたいものです。

 (次号でも発言を掲載する予定)

(新聞「農民」2000.6.12付)
ライン

2000年6月

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