「農民」記事データベース20000529-450-06

新農業基本法は何をもたらしたか


 昨年七月、自自政権のもとで、新農業基本法が日本共産党だけの反対で強行されました。以来十カ月、どのような事態が起きているでしょうか。

「少しはよくなるのではないか」という農民の期待に応えたでしょうか

 (1)まず、米一俵を六百円で投げ売りする非道なことが行われました。これは米の暴落に拍車をかけました。これに対する批判が高まったためにとられた措置は、農民から反当たり千五百円拠出させ他用途米なみ価格にするというもの。

 大豆・ナタネ、牛乳、テンサイ・砂糖きびの価格保障が廃止され、これですべての価格保障制度が廃止され農業予算も公共事業に五割、価格保障には一割という逆立ち予算のままです。

 旧農業基本法で定められていた再生産の確保ができる価格保障が捨て去られ、新農業基本法では市場原理がうたわれた結果です。

 (2)外米輸入はどんどん増やす一方で、史上最高の四割に近い減反が押し付けられたままです。また、野菜や果実、畜産物の輸入が加速され、暴落しました。

 WTO農業協定で、自由化の促進、ミニマム・アクセス米の輸入と減反の強制が取り決められていますが、これを忠実に国内で実施するための新農業基本法であったことの証明です。

消費者・国民にとってはどうだったのでしょうか

 (1)八三・四%の国民が国内産を求めているのに、食料自給率は下がる一方です。食料自給率の目標は提起するが、実現の責任は農民や消費者にあるとする新農業基本法では向上のメドはたちません。

 (2)七二%の国民が輸入農産物に不安をもっているのに、消費者の選ぶ権利を保障する原産地表示や遺伝子組み換え食品の表示はほんの一部に限られています。遺伝子組み換え食品の表示は一割にすぎず、すでに五百万トンの大豆が輸入され食用油や味噌・醤油、豆腐などに使われ出回っています。大豆、トウモロコシなど輸入の大部分がアメリカからのものです。ヨーロッパでは受け入れ拒否をしているのと対象的な事態です。新農業基本法のあいまいな規定にとどまらず、農薬の基準や検査を輸出国のいいなりに改悪した関連法の実施によるものです。

私たちの新農業基本法に対する要求

 (1)「輸入優先をやめ、食料自給率の向上を政府の義務とすること」を明確に位置づけること。
 (2)市場原理でなく、再生産できる農畜産物の価格保障を明記すること。当面、逆立ちした農業予算を逆転させること。
 (3)輸入の激増が、農業生産に重大な支障を与えているいま、新農業基本法にも定められている輸入制限を緊急に実施すること。
 (4)中山間地に対する所得保障や都市農業への支援を拡大充実すること。
 (5)すべての食品に原産地や遺伝子組み換えの表示義務づけを明記すること。
 (6)WTO協定の抜本的改定を提起すること。

(谷口一夫/新聞「農民」2000.5.29付)
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2000年5月

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