「農民」記事データベース20000522-449-11

公共事業費

ゼネコンや高級官僚悪徳政治家の食い物に


公共事業費はどうして減らないの

 今年三月、農水省の元課長補佐と現職キャリア官僚が、四国の農協から過剰な接待を受けたとして、収賄容疑で逮捕されました。後日、ある新聞が農水省の職員、OBに独自取材したところ、「ワイシャツは(自分で買うものでなく)もらうもの」などと、タカリ体質をあっさり認めたといいます。

 しかし、これは氷山の一角のそのまた一角というべきものです。昨年、十八人の処分者を出した農水省の調査では、構造改善局の次長も自治体首長からの物品提供疑惑が指摘されていました。ところが、「技官の王国」といわれる同局の頂点に立つ次長は、天下り先も含めた技官の人事権を握り、その力は時には局長をしのぐほど。トカゲの尻尾きりで逃げ切りました。

天下り高級官僚の退職金の原資に

 昨年「丸投げ」が問題になった「ふるさと情報センター」

(財団法人、構造改善局が所管)は、九六年に全国二百二十一の自治体から請け負ったコンサルタント業務(総額約十一億五千万円)を、すべて財団に登録する民間企業に再委託し、自分は何もしないで約三億五千万円を手に入れていました。これが天下り官僚の年収と退職金合わせて数千万円から一億という高額な報酬の原資になるのです。

 また、農村地区の下水道施設の普及をはかる農業集落排水事業(九九年度事業費二千六百億円)。同事業には、構造改善局が所管する社団法人「日本農業集落排水協会(集排協)」が勧める高単価の方式を導入するという“暗黙のルール”があります。

 かつてこのルールを無視して、民間企業が開発したシステムを採用した京都府園部町(野中一二三町長、同氏は自民党の野中広務幹事長の弟)は、協会方式よりも建設費で三割安、その後の管理費は七割も削減できたといいます。集配協が、協会方式にこだわるのは、賛助会員に名を連ねる約六百社のメーカーや設計会社のため。税金のムダとともに、農家にとっても高い負担になっています。

利権の裏でうごめく自民農林族

 この利権の構図を裏で糸を引いているのが、自民党の農林族と呼ばれる議員連中です。彼らは、毎週二回、農水省の幹部職員を集めて会合を開き、「どんな些細な事業も、ここを通過しなければ動かない」状況をつくっています。

 「しんぶん赤旗」九九年一二月三十日付は、自民党農林族の実力者、松岡利勝衆院議員が、地元選挙区内の反対派首長を押さえ込むために農水省に圧力をかけ、補助金交付をやめさせていた事実を暴露しました。同議員は、予算の個所付の前提として首長自ら「松岡事務所にお礼を行う」ことを求め、それを断った自治体の事業は中止。自民党による農水事業の私物化は、きわめて深刻です。

UR予算で強くなったのは政治家

 自民党参院比例区から出馬する農水省OB二人のうち、一人は必ず構造改善局次長。彼らはその悪しき政治力をフルに使って事業の呼び込み、「土地改良区」を総動員して票も金も集めます。「土地改良区」の上部組織の都道府県「土地改良事業団体連合会(土地改連)」は、その十五まで元職を含め国会議員か会長を務めています(京都の野中広務氏、埼玉の三ツ林弥太郎氏など)。

 「UR予算で強くなったのは農業ではなく政治家のほうだ」と言うのは、長年、公共事業にかかわってきた設計業者。コメの輸入受け入れと同時に、「強い農業を育てる」と創設したウルグアイ・ラウンド農業対策費(UR予算)6兆百億円)の大部分は、こういう公共事業や補助金に費やされています。

 公共事業が農家の要求にもとづいて適切に行われるなら、農業生産を高め、農村の活性化につながります。ところが右手で日本農業を危機に追い込み、左手で利権をむさぼっているのが自民党です。

(新聞「農民」2000.5.15・22付)
ライン

2000年5月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2000, 農民運動全国連合会