国内唯一の国産種子トウモロコシを生産・普及信州・伊那谷にみる/JA伊那歴代自民党政府の輸入自由化政策で、肉や乳製品の自給率の低下と飼料の外国依存も強まり、畜産の危機が強まっています。そのなかで国内種の飼料用種子トウモロコシを生産して畜産農家に提供している農協があります。信州伊那谷。西に中央アルプス、東は南アルプスに囲まれた天竜川の河岸段丘西岸。伊那市から北部一帯の標高八百メートル地帯が国内で唯一、国産種子トウモロコシを生産し、さらに外国種に劣らないといわれる新しい品種を栽培・普及しているところです。(冨沢)
最盛期は一千トン谷とはいいながら、広々とした西部地帯上部はかって松や雑木の林でした。戦後、開拓されて雑穀畑や畜産地帯になりました。輸入自由化政策で衰えたとはいえ、いまでも夏にはトウモロコシ畑や牧草地がはるか下に天竜川を望んで広がります。標高八二〇メートルの伊那市西箕輪にあるJA上伊那西箕輪支所。ここで国産種子用トウモロコシの生産指導と調整、種子会社との契約をしています。営農課の清水博人さんによるとハトウモロコシの種子を作っているのはJA上伊那の伊那市、南箕輪村、箕輪町の二十七名の農家。品種は自然交配種のホワイトデントコーン・長野1号、F1の交3号など。 最盛期は一千トンのタネが全国に出荷されましたが、現在の主力は長野3号とホワイト十トン程度。これらはすべて種苗会社との契約栽培で、前は会社の方から契約量を減らしてきたけど、いまは生産者の方がこたえ切れず、契約量が年々減っているそうです。
新品種も開発これらのタネは、長野県塩尻市にある中信農業試験場で開発されたもので、倒伏しやすいけれど成長が早く、食いもよく、いまは契約栽培で全量種苗会社に引き取られ、台風前に刈り取りできる九州などに出荷されているということです。「いま、JA上伊那で力を入れている新しい品種があります」と清水さん。「それは同じ平成九年に中信農業試験場から登録されたF1のタチタカネです。倒伏しにくいので外国種に対抗できると思います」。まだタネがあるというので見せてもらうと、従来品種のタネは全量出荷ずみで、とっくに耐用年数もすぎたのにだいじに使われているらしい調整用機械のそばにタチタカネの二十キロ袋が七つ、計百四十キロおいてありました。
外国産に負けぬ近くにこのタネを蒔いて飼料にしている酪農家があるというので訪ねました。戦後、百町歩の林に五十五戸の農家で開拓に入った伊那市ますみケ丘の酪農家の二代目桃沢明さん(五十四歳)は伊那酪農協同組合の副組合長です。現在、ますみケ丘で八戸の農家と共同でエサ作りにたずさわるなど、自給飼料で搾乳牛七十頭、肥育牛三十頭、繁殖牛十頭の経営をして「ずーっと前からやってきた」のに、昨年、自給飼料で酪農をしてきたとして県知事賞をもらったといっていました。 タチタカネの試験栽培に協力した桃沢さんは、「実も外国種と同じくらい茎の下方について倒伏しにくく、量もひけをとらない。それなら遺伝子組み換えなどで信用できない輸入のタネや、チッソ過多にしてあると思われる異常に緑色が濃い輸入乾牧草なんか使うより、国産のタネを使った方がいい。価格だって安いし」と話してくれました。そして「伊那は米農家が多い。コメを輸入しながら減反を強制し、とれ過ぎたら安く飼料用にまわすなんていわれたら米づくりの顔も見れないよ」とも。
もっと普及を「俺たちは安全な国産飼料で育てた牛からしぼった安全でおいしい牛乳を提供したいんだよ。消費者もそれを望んでいるし、それが最高の信用になると思うよ」と熱をこめて語りました。JA上伊那はこの国産トウモロコシの夕ネ「タチタカネ」を多くの酪農家に普及したいと力を入れているということでした。
◆問い合わせ先JA上伊那本所営農部米穀課・電話0265―72―8833 (新聞「農民」2000.5.15・22付)
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[2000年5月]
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