農に生きるうたの数々畦に俳句を書きとめて埼玉文学賞受賞者の尾堤輝義さん
大地にどっしりと根を張り、農をうたい続ける俳人の尾堤(おづつみ)輝義さん(52)。埼玉県春日部市で露地野菜を栽培する専業農家で農民連の会員。埼玉県俳句連盟事務局長として県内俳句界の中心となって活躍しています。
「この句が一番気に入っている」という尾堤さん。農作業中に浮かんだ句を俳句手帳に書きとめようと、鉛筆をポケットから取り出したら芯が折れていて、鎌で削ったことからうまれた作品。農民ならではの体験がなければ出来ない句です。 手帳やメモ帳も持ち合わせていなかった時に畦やトラクターのボンネットに書きとめたということもありました。 俳句の話になると、ハウスの中でトマトの苗に水をやっていた手のごつごつした姿からは、想像もできないほどわき出る水のように途切れなく続きます。 俳句をつくるきっかけは小学校五年生の時に担任の先生からすすめられたこと。 「先生が作った作品と、私の俳句を一緒に投稿してくださり、たまたま賞をいただき気をよくした」という尾堤さん。それ以後、「人間関係みたいに一時俳句が嫌になったこともあった」そうですが、つくり続けています。 「旅行をして観光写真を撮るみたいな句はつくらない」という尾堤さんの句は、叙情的なものでなく、農の生活や周辺のことを題材にしています。 露地野菜の栽培とともに稲を一ヘクタール作っている尾堤さんは、強制減反に怒りをつのらせます。
これらの句は「天領」と題した作品に納められ、昨年、埼玉新聞社の「第三十回埼玉文学賞」俳句部門で受賞しました。このほか、埼玉県内の俳句賞、俳句大賞、文芸賞とすべての賞を受賞しています。俳句界の重鎮だった加藤楸邨が主宰した「寒雷」などに毎月投句しています。 「八百屋さんや近所の人がトマトがおいしいと買いに来る。なぜかと思い、スーパーのトマトを買って食べてみたら、味もなくまずいことがわかった」とにっこりしながら野菜作りにも励む尾堤さんです。
(西村/新聞「農民」2000.4.17付)
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[2000年4月]
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