遺伝子組み換え技術は21世紀の救世主か、悪魔か〈下〉プシュタイ博士の実験が物語っているもの忘れてはならない「予防の原則」
プッシュタイ博士は、スライドを写しながら組み換えジャガイモと非組み換えジャガイモを与えたネズミでは、次のような大きな変化が現れたと説明します。 (1)マツユキソウのレクチン(毒性タンパク)が存在するジャガイモ(組み換えたものと非組み換え・レクチンを添加したもの)を食べたネズミは、共に肝臓が普通のものより小さく、重量も軽くなった。(2)膵臓、心臓、肺、脳、睾丸などは、組み換えジャガイモを食べたものだけが重量の低下。(3)胃の粘液を比較すると、組み換えジャガイモを与えたものは、リンパ球が著しくふえて厚みが増し、胃の内壁が肥大していた――といいます。 実験の結論としてプッシュタイ博士は、遺伝子組み換えされたジャガイモは、組成的にも、栄養的にも元のジャガイモとは異なっていること。そして重要な点は、マツユキソウのレクチン(毒性タンパク)の有無ではなく、元のジャガイモの遺伝子の中に新たにマツユキソウの遺伝子を挿入するという組み換え技術そのものによって予期せぬ大きな影響が出たと強調しています。
遺伝子組み換えは未熟な技術なぜ、このような予期せぬ変化が起きたのか、プッシュタイ博士はその原因を引き続き追求する実験が必要だと前置きして、こう述べました。「一つは、レクチン遺伝子をジャガイモに挿入するのに使うベクター(運び屋)やプロモーター(発現機能)遺伝子が何らかの有害な影響を与えていること。もう一つは、現在の組み換え技術では、組み換えた遺伝子がジャガイモの遺伝子の並びのどこに入るか制御できない。このため組み換えで有害な未知の物質ができたり、眠っている遺伝子を目覚めさせ、悪い働きをしたとも考えられる」このように遺伝子組み換え技術は、予測のつかない技術であり、未熟な技術だというわけです。 イギリスでは、すでに遺伝子組み換え食品が市場流通し、食卓に上っているのにプッシュタイ博士が行ったような安全性の検査や実験やは全く行われていませんでした。 この予期せぬ実験結果に大きなショックを受けた博士は、国民の税金をもらって研究を行っている科学者として、黙っているわけにはいかないと、九八年八月にテレビのインタビューをうけて内容を公表しました。それはこれまでの遺伝子組み換え技術の安全性の根拠をひっくり返す起爆剤となり、バイオを推進している多国籍企業などから大きな圧力が加わり、四十八時間後には研究所から退職処分を受けました。 いま博士は、イギリスをはじめヨーロッパ各地をまわって講演、GM作物の危険性や同博士の行った実験の継続を訴えています。
21世紀へ向けての道しるべはプッシュタイ博士は、二十一世紀に向け、GM食品を論じる上で、(1)予防の原則を忘れてはいけない。テストもされず、実用化するのでなく、GM食品は一度市場から引き上げて、厳格な検査、実験をすべきである。(2)GM食品は危険か、そうでないか分からない。科学者はそれを評価する方法をもっている。消費者は科学者にその実験を実施させるよう要求するとともに、政府に対しても訴えていくことが重要性だと語っています。またプッシュタイ博士は、本紙とのインタビューでモンサント社や農水省が、日本の農村にGMイネや大豆の栽培を持ち込もうとしていることついて「GM作物はだれにとっての利益があるのか。いまの第一世代のGM作物は、地球環境を汚染し、持続的農業を破壊するだけです。日本の農民のみなさんは絶対に避けるべきだ」語りました。 (おわり)
(新聞「農民」2000.4.10付)
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[2000年4月]
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