「農民」記事データベース20000403-444-02

固定資産税引き下げのチャンス

たたかえば減額・返還…数々の成果

関連/一般市街化区域農地も生産緑地指定ができる

4月3日から課税台帳の縦覧がスタート
審査申出制度が変わり、期間も延長に
出足早く取り組みを開始しよう!

 多くの市町村で四月三日から固定資産税の課税台帳の縦覧が始まります。

 税金申告の中で、茨城のレンコン栽培農家は三百〜五百万円の減収になるなど、農畜産物価格の低下で収入が大幅に減っている実態が各地で浮き彫りになっています。重税で苦境に立たされている農家に、さらに追い打ちをかけるのが固定資産税です。地価が下落しているのに農地は増税されるからです。

 今年は三年に一度の固定資産税評価がえで、引き下げるチャンスです。前回九七年の評価がえのとき、農民連本部は審査申し立てを行うよう呼びかけ、各地で取り組みました。取り組んだところは、一定の成果を上げています。

 今年は、審査申出制度が変わり、申し出期間が四月三日から多くは五月三十日と、これまでの倍に延長されました。また、申請者の疑問に対して市町村長に回答を義務づける照会制度が新たに設けられました。この変えられた制度は大いに活用できます。

 まず、最初に固定資産税の課税台帳を縦覧し、審査の申し出に早く広く取り組みましよう。


 三年前の固定資産税評価がえのときに、農民連は全国で本格的に取り組みました。固定資産税の課税台帳を縦覧し、異議申し立てに取り組んだところは、税額を引き下げさせたり、返還させたりという多くの成果を上げました。

誤った評価額を是正させ年額七〜八万減額に

奈良県 宮本照三さん

 奈良県天理市の宮本照三さんは三倍にも引き上げられている固定資産税に怒りをもち、審査請求を行いました。審理の場で、宮本さんは天理市長の答弁書に書かれた「標準宅地」「主要な街路の路線価」などの決め方やその根拠を質問すると、市当局の担当者は何度も答弁不能におちいりました。あげくの果てには、宮本さんの家には水道がないのに入っているとの前提で評価し、平成六年度分から固定資産税を課税していたことが判明、約六万円引き下げさせました。さらに宅地なみ課税の畑の標準地評価額が、誤って平方メートル当たり二千円も高く設定されていたこともわかり、年額七〜八万円を減額させました。宮本さんは、その後も市街化区域農地を生産緑地に追加指定するよう要求しましたが、「追加指定をしない」という市当局に都市計画の線引きを変更し、調整地域にするよう要求しています。

養豚場敷地の認定の誤りで九年分とり戻す

茨城県 青木行さん

 茨城・県西農民センターの養豚農家・青木行(こう)さんは、養豚場の敷地が宅地になっていて評価額が高いことを知って調べました。養豚場と住宅用地との境界がない場合、農家の床面積の十倍までは二百平方メートルまでの分は六分の一、二百平方メートル以上の分は三分の一に軽減される措置がわかり、審査請求をしました。

 審査委員会で「養豚場の土地は本来、雑種地として認定すべきなのに、宅地からの比準になっている。豚舎の屋根がトタンなのに瓦屋根で課税されている」などと質問。税務課は答弁不能になりましたが、審査請求は棄却されました。ところが、審査請求が認められなければ返るはずのない固定資産税が「認定に誤りがあった」と、昭和六十三年から平成八年までの九年分の固定資産税十一万千百円がかえり、平成九年の税額から一万五千九百円も安くなりました。

 青木さんは「本来なら役場が間違っていたら直すのが当然なのに、そうしない。今年も縦覧して、おかしければ審査請求をする」と語っています。

堆肥場が農用施設となり九万円から百七十円に

東京都 草木栄治さん

 東京・八王子市の東京農民連理事の草木栄治さんは、市街化調整区域に作った四百四十三平方メートルの屋根なしの堆肥場が「床をコンクリートにした」という理由で「雑種地」として課税されてきました。

 草木さんをはじめ東京農民連は「堆肥場は有機栽培に欠くことのできない農業用施設。雑種地を改めよ」と要求、平成九年度から農地なみの課税になり、九万四千円余から百七十円に下がりました。

 草木さんは「市街化区域農地にもシイタケ置き場や物置小屋などの農業用施設があるが、宅地課税となっている。農地なみの課税にしてほしい」と要望しています。

間違った現況認定を修正、百二十三万円返さす

千葉県 小倉毅さん

 三年前、全国連の呼びかけに応えて農民組合員と二人で縦覧しましたが、何の疑問も持ちませんでした。

 それが昨年、市から送られてきた「課税資産内訳書」を見ると、宅地区分のところに非住宅用地と記載されている宅地が六筆あることに気がつきました。

 私は、この「非住宅用地」の意味がわからず、資産税課に聞くと「住宅が建っていない宅地のことで、通常の宅地の約二倍くらいの課税額」というのです。

 私は、この六筆にはすべて住宅が建っていること、大昔から貸してある宅地であることを伝えました。担当者は「現況を確認したうえで修正し十五年さかのぼって返還します」というのです。結果、百二十三万円が返還され、さらに国保税の資産割の分が五年さかのぼって十二万円返ってきて、総額百三十五万円です。

 まずは自分の土地が現況通りに評価されているかを確かめることです。現況確認などほとんどやらないまま、評価し課税しているのですから。

 固定資産税を引き下げるうえで、生産緑地の指定を受けるかどうかは、重要なポイントです。


一般市街化区域農地も生産緑地指定ができる

 固定資産税を引き下げるうえで、生産緑地の指定を受けるかどうかは、重要なポイントです。

 昨年十二月九日の自治省との交渉で、三大都市圏の特定市街化区域農地は、生産緑地の追加指定ができるし、一般市街化区域農地も生産緑地の指定が可能なことがはっきりしました。

 それは交渉の中で、自治省税務局固定資産課の山崎一樹理事官が「(生産緑地について)三大都市圏だけでなく、その他の市街化区域もできる」と答えたからです。これで農産物の収入や小作料よりも高い固定資産税の問題を解決できる道が切り開かれました。

 都市計画法が改正され、今年四月からは、指定の権限が知事から市町村長に移されました。市町村に生産緑地の指定を大いに要求していきましょう。

(新聞「農民」2000.4.3付)
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2000年4月

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