「農民」記事データベース20000403-444-01

全米の36団体結集、政府に強く要求

危機深刻!“アメリカを救え”

ワシントン農民大集会リポート/真嶋良孝

 「アメリカの農村を救え」と、「ラリー(集会)・フォー・ルーラル(農村)・アメリカ」が、桜が満開のワシントン・D・Cで三月二十日〜二十一日に開かれました。連邦議会議事堂前の広場に設営した大テントには、約三千人の農民とNGOが集まりました。この集会に参加した農民連の真嶋良孝事務局次長からの現地リポートです。


“生きるための価格保障を”

痛切な訴え、延々と二日間

大恐慌以来の経営危機に直面

 「このラリーは、ここ二十〜三十年で最大の規模。いま、立ち上がらなければ間に合わないからだ」という主催者の言葉に示されるように、集会には危機感とたたかう決意がみなぎっていました。

 集会は、一日目が開会集会と議会横の公園での「農民昼食会」、午後は国会議員や農務省を招き、その面前で延々と農民たちが訴える「農業危機についての討論会」。討論は二日目も続きました。ラリーには、テニスで延々と続く打ち合いの意味もありますが、これを地でいくもの。

 一九九六年農業法で価格保障(不足払い制度)が廃止されたあと、アメリカの農民は一九五〇年代以来最低を記録している農産物価格のもとで、一九三〇年代の大恐慌以来といわれる経営破綻に直面しています。

子連れの女性が声をつまらせて…

 延々と続く討論では、言葉の違いはあれ、日本の農業危機の現実を聞いているような錯覚に何度も陥りました。

 たとえば、子どもを二人つれて参加したという女性は、「夫はノイローゼになってしまい、精神病院に通っている。子どもたちが私の励ましになっている。この子どもたちのために、壮大なたたかいをしなければならない。私は農業を愛しているし、続けていく決意だ。私は農民にとっての正義がほしいだけだ」と声をつまらせながら発言。また、アイオワ州の農民の絶望を語ったロジャー・スミスさんは、夫が自殺した女性の次のような発言を紹介。「夫は私に夢と子どもたちを与えてくれた。夫はいい男だったけど、すべてメチャクチャになった。私のような経験は繰り返してほしくない。子どもたちは農業をやると言っている。確信をもってたたかおう」。

多彩な発言者 多国籍企業批判

 このラリーは、日本でいえば「連合」に当たるAFL―CIO(全米労働総同盟)や三つのキリスト教団体、それに私たちが昨年十一月にシアトルで会談した全米家族農業者連合(NFFC)など三十六団体が主催しました。アメリカらしいと思ったのは、牧師さんが「農業と食糧は家族農業が担うべきであって、多国籍企業が担うべきではない。これが神の教えだ」と、かなり派手なアジテーションをしていたこと。

 多彩な意見が表明されましたが、参加者の一致した意見は、ノースダコタの農民の次のような発言が代表しているといってよいでしょう。

 「アメリカの農民はヨーロッパの農民の十分の一しか保護を受けていない。しかし、輸出のための補助には金を注ぎこんでいる。われわれは、輸出のための補助ではなく、農民が生きるための価格保障をかちとらなければならない」

 また、私はやや複雑な思いで聞きましたが、与党・民主党の上院議員が「アメリカの市場原理がアメリカの農業と環境を破壊しており、この悪影響が世界に広がっている。正しい政策を作り、農村の危機を打開するために、今こそ立ち上がるときだ」と、激しい口調で演説しました。

“世界中の農民と団結しよう”

 会場内は多彩なプラカードが林立しましたが、私が一番傑作だと思ったのは「一九九六年農業法は不要だから“競売”にかけよう」というスローガン。

 アメリカ議会は、昨年一年間で八千億円を超える緊急援助予算を組みましたが、まったくの「焼け石に水」に終わったため、新たな対策を検討中です。

 シアトルで会談して以来の再会となったビル・クリスティソンNFFC委員長は、私たちがわざわざラリーに参加するために訪米したことに大変感激した様子で「世界中の農民の敵は多国籍企業とアメリカ政府、そしてWTOだ。私たちはアメリカ政府の農業政策を変えるためにたたかうことが、世界中の農民に対する義務だと思っている」と語ってくれました。

マーク・リッチーさんも大喜びで

 国際シンポジウムに参加したマーク・リッチーさんは、私の姿を見ると飛びついてきて「よく来てくれた」を連発していました。

 アメリカ農民のたたかう姿を見て、アメリカの家族農業の礎を築いたともいえるジェファーソン第三代大統領の記念館も訪問し、新しい友人とも知りあえた今回のワシントン訪問はとても有意義でした。

(現地時間三月二十二日午後十時)

(新聞「農民」2000.4.3付)
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2000年4月

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