学校給食 食料自給率で比べたら米飯はパンの三倍も高かった
「エーこんなに違うの!」という結果が出ました。それは、学校給食の米飯とパン食のメニューの違いによる食料自給率の比較。米飯の場合は六〇%前後、パン食の場合は二〇%台前半と、半分以下です。 政府は二〇一〇年の食料自給率を四五%(カロリー、98年三九%)に引き上げる計画を決めました。ところが、二〇〇〇年度からは学校給食用米穀の値引き措置は全廃するという――あべこべな話です。 表は、都内のある小学校のメニューを、農水省の「食料自給率早見ソフト」を使って計算したもの。米飯とパン食の自給率の違いは明らかです。しかも、米飯給食を週三回実施すれば四六%になりますが、週二回では現在の自給率以下。
米飯給食の実施回数は、平均で週二・七回。給食一食当りの単価は二百二十円前後で、そのうち、ご飯は五十円と、三十五円のパンより割高になります。しかし、ご飯の五十円のうち、約半分は炊飯などの加工や運送費。ですから、九七年までの値引き措置(新規実施校60%、週三回以上実施校47・5%、その他校40%)がとられれば、パンと肩を並べる単価で済むのです。 値引き措置が廃止されることになったのは、自民党・橋本内閣のもと財政構造改革の一環として「バラマキだ」と、段階的な廃止が決められたため。ところが、その後、財政改革は凍結。銀行支援やムダな公共事業が、自自公・小渕内閣に引き継がれ、国と地方合わせて六百五十兆円という膨大な借金になっています。 値引き措置にかかる予算は二百億円程度です。政府は、自給率目標は「国民参加型の農業生産及び食料消費の両面にわたる取組の指針」などと、国の責任をあいまいにしていますが、道理が通らない値引き廃止の方針を改め、未来を担う子どもたちのために復活させるべきです。
自県産米に続き麦、大豆も使用 埼玉埼玉県では、九八年末、県内全小中学校で自県産米使用の米飯給食を始めたのに続き、うどんに使う小麦、納豆の大豆を県内産に切り替え、さらに来年度から、県内産小麦を使ったパンを供給。米飯給食の回数は、週二・七回(98年度)から二・八二回(99年度)に増やしています。「栄養士さんから『米飯給食を増やしお米の文化を伝えたい』という要望が強く出ている。パンを自県産に切り替えるのもそうです」とは、県農林部の小山喜代司主査の話。 とりわけ、外国産から県内産のタチナガハに切り替えた納豆は評判とか。また、米は不作時の高騰に備えて学校給食会が基金を積んでいます。
全教栄養職員部長 中村扶美子さん(東京・板橋区栄養士)いま全国で千二百万人の児童が学校給食を食べています。私たちは、栄養の面からも、また日本の食文化を引き継ぐうえでも、米飯給食の回数を週三回〜四回にしたいと思っています。ご飯には、魚や煮物などを合わせやすいのです。ところが、「値引の廃止で単価が高くなると減らさざるを得ない」という声も聞こえてきます。何としても復活してほしい。また、私たちは季節感のある給食、日本の伝統食を子どもたちに食べさせたいと思っています。そのために、六百人に一人という栄養士の配置基準の見直しや、自県産米や地元の野菜をもっと使いやすくする制度を要求しています。
◇学校給食の本紹介◇『完全米飯給食が日本を救う』この本の編集は、「学校給食と子どもの健康を考える会」。代表の幕内秀夫氏は、序文で「農家の方々が米の生産調整や食糧自給率の問題で苦労しているのに、なぜ、現在でも輸入小麦のパン給食が継続されるのでしょうか。こんな矛盾した話はありません。…子どもたちの健康を守るためにも、日本の農業を守るためにも学校給食は完全米飯、あるいはそれに近いものにすべき」と述べています。 内容は、同会が九八年十二月に開いたシンポジウムのパネリストの発言をまとめたもの。作家の井上ひさし氏をはじめ研究者、医師、栄養士が発言しています。とりわけ胸を打つのは、週五回の完全米飯給食を実施している福島県の加納小学校栄養士・坂内幸子さん(当時)の奮闘ぶり。「たまにはパンも食べたい」という子どもたちとの心のふれあいに感銘を受けます。 (東洋経済新報社、千二百円+税)
(新聞「農民」2000.3.27付)
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[2000年3月]
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