「農民」記事データベース20000327-443-07

遺伝子組み換え食品 幕張に響く「GMOノー!」

コーデックス国際会議場周辺

トラクターを先頭にデモ、集会で訴え

関連/“大豆もっと作ろう”プシュタイ博士が講演

 千葉市幕張で開催されたコーデックス委員会特別部会(三月十四日〜十七日)に合わせ、農民連も参加する日本NGO委員会は、多彩な行動を展開しました。開催日の十四日はホワイトデーにちなんで、蝶の姿をした若ものたちが国産大豆で作ったオカラクッキーを外国代表に配って「NO!GMO」を訴えたあと会議場周辺で集会・デモを行い、十五日は海外NGOと国産大豆加工食品の試食会やパフォーマンスの夕べ、十六日には内外運動家によるディスカッションなどが行われました。


 開会日の三月十四日、「遺伝子組み換えはいらない」「WTO抜本的改定を!」の横断幕をつけた千葉県連のトラクターなど五台を先頭にデモ行進が行われ、約八百人が参加しました。デモ行進が昼休みの時間に国際会議場前にくると、外国の代表が室内から手を振り、連帯を表明するなど大きな反響を呼びました。

 快晴のもと、集会場の周辺には菜の花が咲き乱れるなか、関東の農民連代表をはじめ、GMトウモロコシの葉を食べて死んだチョウにふんした若者やトウモロコシやモルモット姿の生協組合員の若い主婦などが、さまざまな創意工夫をこらして集まりました。

 十一時から幕張の海浜公園で決起集会が開かれました。農民連を代表して地元の千葉県連東総農民センターの大木伝一郎さんが「圧倒的多数の国民が要望している国産の安全な農産物を作ろうと努力している。その一つとして消費者と一緒に大豆畑トラスト運動にも取り組んでいる。遺伝子組み換え食品はすべて表示させよう」と決意表明しました。

 これに先立つ朝九時から約一時間にわたって、国際会議場前で外国代表にチラシとクッキーなどを配りました。


“大豆もっと作ろう”

海外代表も参加試食会や討論・交流

 「こんな食べ物を考えだすなんて、日本の昔の人々はグレイトだ」豆腐作りの実演を見たアメリカ人のフィル・ベルナックさん――コーデックス委員会二日目の三月十五日、千葉県幕張に開設された日本NGO委員会の会議室で、「コーデックスNGOフォーラムインちば」のプログラムの一環として「大豆は主要食品だ!」をテーマにディスカッションが開かれました。

豆腐に「おいしい」と舌鼓うつ外国代表

 大豆を味噌・しょうゆなどの発酵食品や豆腐などにして食べてきた日本の食生活を見直そうと、さまざまな大豆製品が持ち寄られた集会には、全国各地のNGO、生産者、生協組合員など約百名が参加。「遺伝子組み換え食品は食べたくない」「表示をきちんとしてほしい」「国産大豆を作ってほしい」「作りたい」という熱い思いが次々と語られました。ランチタイムには、コーデックス委員会に出席しているWHO代表の委員やイタリア、ポルトガルの政府代表、CI(国際消費者機構)の代表団も会議場から駆けつけ、国産大豆による手作り豆腐のおいしさに舌鼓を打ちました。

 会場では、「食料の生産と消費を考える研究会(生消研)」の石井正江さんが豆乳作りを実演。また、茨城県南農民組合の小林恭子さんも農民連醤油や手作りみそ、豆腐作りキットで作った豆腐を参加者に振る舞って「安全・安心な国産大豆が食べたいという消費者、加工業者と生産者が結びついて、二年前から大豆畑トラストを始めた。豆腐作りキットも大好評で、すでに千キットを超えた」と発言しました。

生産者の訴えに会場から大きな拍手わく

 また、生産者の立場からは千葉県東総農民センターの寺本幸一さんが発言。「六ヘクタールの大豆を作っている。大豆作りは機械が何種類も必要な上、行政からの援助はなく、価格も安くて大変だが、大豆畑トラストでの消費者からの応援があるから頑張れる。政府は大豆の自給率を上げるというのなら、輸入を減らしてほしい」と発言し、会場に大きな拍手が湧きました。また福島県の「大豆の会」の取り組みを紹介した農民連本部の塚平広志さんは「大豆の自給率向上には価格保障制度を守っていくことが重要」と、訴えました。

外国代表もあきれる日本の対米追随ぶり

 このほか、「消費者の立場からGMOを学校給食に使わないよう議会に働きかけている。今年は大豆畑トラストにも取り組みたい」と発言したコープやまなしをはじめ、生活クラブ生協、九州のグリーンコープなど生協の実践も活発に交流。おからクッキーを持参して参加した下郷農協、京都から参加した学生NGOのSAGEなど、多種多彩にアピールしました。

 またポルトガルの政府代表は「GMOはまだ未解明の技術で、消費者の選ぶ権利を守るためにも表示は必要です。そのためにも流通段階からの情報公開のシステムは前提条件です」と熱っぽく語り、逆に「日本政府はアメリカべったりですが、あなたはそんな自国の政府についてどう考えていますか」と記者が聞き返される一幕もありました。

 この後、海外の運動報告、パフォーマンスの夕べと夜八時すぎまでプログラムが続き、ヒューマン・ファーマーズも出演、ユーモアたっぷりの歌に会場から笑いが起きました。


プシュタイ博士が講演

NGO国際集会 国際消費者機構代表も報告

 千葉・幕張で開かれるコーデックス委員会バイオテクノロジー特別部会を翌日に控えた三月十三日、「遺伝子組み換え食品いらない!NGO国際集会――世界消費者権利の日行動――」(主催・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン)が、東京で開かれました。

 基調講演は、ラットを使った実験で、遺伝子組み換え食品の危険性を立証したイギリスのアーパット・プシュタイ博士。博士は、遺伝子組み換えジャガイモを食べさせたラットに、内臓の肥大、リンパ球の増加などが見られた実験結果を示し、「遺伝子を組み換えたものと、元のものは同等ではない。技術として非常に末熟な遺伝子組み換え食品は市場から撤去すべき」と明快に述べました。

 また集会では、コーデックス委員会に正式参加する、世界で唯一の国際的な消費者組織であるCI(国際消費者機構、百十一カ国二百四十三団体が加盟)の代表団(団長・ジーン・ハロラン氏=アメリカ)が報告。ケニアのサムエル・オキエン氏は、「アフリカは、農業が経済の支柱であり、食料安保は非常に重要な課題だ」と述べ、大多数の農民を淘汰する遺伝子組み換え技術、とりわけターミネーター技術に懸念を表明。モンサント社が七八年に首都ナイロビに進出し、「遺伝子組み換えの波がアフリカに押し寄せようとしている」と危機感を表しました。

 またブラジルのリーン・シルバー女史は、ラウンドアップレディ大豆の販売を一時停止させた自国でのたたかいを紹介。「今ブラジルでは、表示の義務づけ、環境評価基準の見直しをしなければ、栽培も販売もできない。農民、消費者、研究者をまきこんだ遺伝子組み換え食品反対の同盟をつくる運動にとりくんでいる」と語りました。

 国際色豊かな同集会は、最後に、自由貿易至上主義からの方向転換、遺伝子組み換え作物・食品の凍結・表示義務づけ、生物特許の禁止などを内容とする「世界市民・NGOアピール」を採択、閉会しました。

(新聞「農民」2000.3.27付)
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2000年3月

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