「農民」記事データベース20000327-443-02

「遺伝子組み換え食品問題」コーデックス特別部会

「実質的同等性」再検討へ

崩れたアメリカの主張 安全性の追跡調査も


 「スイスでは、蝶が羽を動かすと風向きが変わるという諺があります。日本のみなさんの蝶の羽でコーデックス議論の風向きを変えましょう」

 遺伝子組み換え作物・食品の国際的安全基準をつくるため三月十四日から十七日まで千葉市幕張メッセで開かれたコーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会にヨーロッパから駆けつけたNGO(非政府組織)代表は、こう言って参加者を激励しました。

全国から千五百人が行動に参加

 蝶やモルモットに扮して遺伝子組み換え(GM)食品の危険性を訴えた青年や女性たち、トラクターを先頭に会場周辺をデモ行進した農民や生協組合員など、日本NGO委員会(六十団体、百二十五個人)が呼びかけた「コーデックスNGOフォーラム・イン・ちば」行動には、全国から生産者、消費者のべ千五百人が参加。特別部会最終日、吉倉広議長(国立国際医療センター所長)が「この部会は、遺伝し組み換え食品にたいして消費者が持っている不安に応えなければならない」と締めくくるなど、NGOの運動はコーデックス議論の風向きに影響を与えました。

安全性めぐって欧米激しく対立

 今回の特別部会は、国際的に不安が高まっているGM食品の安全性について、予防の原則に立ってより厳しい規制を要求するEUなどヨーロッパ諸国と、GM食品だけの特別扱いに反対し、ゆるやかな基準を主張するアメリカなどが激しく対立する中、日本が調整役を買って出て開かれたもの。

 会議には三十三カ国と二十四の国際機関・消費者団体から二百五十人が参加。二〇〇三年までに最終報告をまとめるために安全性を再検討する対象食品、安全性評価の原則と方法、今後の検討課題などについて討議しました。

 その結果、(1)バイオ食品の危険性を検討する一般原則(議長国日本)(2)分析方法の検討(ドイツ)の二つの作業部会を設置し、来春三月、日本で開く第二回特別部会までに基準の草案を作ることを決めました。

安全性要求は世界の大勢に

 討議を通じた最大の成果は、「実質的同等性」を国際的に再検討することで一致したことです。これまでアメリカや日本政府は「遺伝子組み換え作物は、普通の作物と同等」であり「安全」という隠れみのに「実質的同等性」という立場をとってきました。しかし「実質的同等性の概念は安全性の基礎にならない」「限界性がある」といった参加者の意見が相次ぎ、アメリカも反対出来なくなったことです。

 またEUなどヨーロッパ諸国からは、GM食品の危険性が正確に予測できない時でも慎重に対応する「予防原則」を主張して、反対するアメリカと対立しました。しかし、GM食品を生産段階から消費者に渡るまで「追跡調査」し、リスクがでた場合、因果関係を証明可能にすることや長期的健康への影響、会議の透明性確保、GM食品に飼料を含めることなども盛り込まれ、来年の第二回会合で本格的論議が行なわれます。

 今回の特別部会を通じて、貿易の優先よりも、食品の安全性確保の要求が止めることの出来ない世界の大勢であることをいっそう鮮明にしました。

(T/新聞「農民」2000.3.27付)
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2000年3月

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