激増する輸入“生鮮”? 野菜商社の“開発輸入”などの波に乗って昨年は一挙二割増国内価格の低迷・暴落招く
ナトリウムとクエン酸入りの氷漬けにされて、アメリカはカリフォルニアから船に揺られること三週間、やっと店頭に並ぶのは収穫してから四週間後…こんな輸入“生鮮”ブロッコリーが日本じゅうのスーパーに並んでいます。輸入されているのはブロッコリーだけではありません。キュウリ、トマト、キャベツ、人参、サヤエンドウ、ピーマンなどなど、いまありとあらゆる“生鮮”野菜の輸入が激増しています。 二月に出された貿易統計によると、九九年の生鮮野菜の輸入量は八七万四五五四トン。去年一年間で二割増、九〇年と比べると実に四倍近い急増ぶりです。市場では「入荷が一割増えたら、値段は三割下がる」というのが定説のなかで、国内の野菜価格は暴落・低迷、農家は悲鳴を上げています。
鮮度、残留農薬など深刻な問題この輸入急増の原因は、円高にくわえて、商社や量販店などが種子や技術、資金を出して、海外で安上がりに野菜を生産・輸入する“開発輸入”が急増していること、九八年の国産野菜の不作以来、外食・加工業者が輸入野菜に切り換えてしまったことなどです。また輸送技術の進歩も見逃せない原因の一つです。輸入野菜は、九割が船便で輸送されてきますが、長期間の鮮度保持を可能にしたのが「リーファーコンテナ」です。このコンテナは、冷蔵・冷凍、湿度設定が自由自在。さらに野菜の代謝作用を抑制するための酸素濃度や二酸化炭素濃度を一定に保つ「CA機能」や、エチレン除去機能まで備わっているハイテクコンテナ。このコンテナに積まれれば害虫も凍死してしまい、どんな野菜も長期間青々と保てるというわけです。 しかし、輸入野菜は見かけはキレイでも、栄養価はけっして同じではありません。農民連食品分析センターの分析によると、カリフォルニア産ブロッコリーのビタミンCは、国産の六割程度しかありません。 さらに問題なのは残留農薬です。築地市場の市場卸「東京中央青果」の輸入担当椎名貴代司さんは、「最近、輸入野菜とくに中国産野菜が残留農薬で税関の検査を通らず問題になっている」と言います。中国の野菜生産の現場を視察してきた茨城県西産直センターの小竹節さんも「中国では少なくとも年間二万人が農薬の中毒で病院に運び込まれており、買ってきた野菜を一晩水に浸けて農薬を流すのが主婦の日課になっている」と、二月に開催された作付・市場出荷研究会で報告しています。
暴落・減収に泣くネギ農民国内の野菜価格の暴落・低迷も非常に深刻です。総輸入量の二六%をしめるアメリカをはじめ、ニュージーランドや韓国など世界中から安い野菜が流入しているからです。「値上がりするはずの二、三月になっても、今年は安いまま。例年の半値にしかならない」。こう語るのは千葉県成東町のネギ農家の河野重信さん(42)。原因は昨年七割も増加した中国からの輸入です。二百〜三百万円減収の農家も珍しくありません。ネギ以外にも、最近中国からの野菜輸入は急増しています。「しかも日増しに品質が良くなっている」と東京中央青果の椎名さんは言います。品目も生姜、ニンニク、タマネギ、タケノコなどに加えて、原木シイタケ、ソラマメ、インゲン、ブロッコリーなど多彩なのも最近の特徴です。 しかしその中国は野菜が余っているのかというと、そうではありません。十三億の人口を抱えて食料需要はますます高まっているなかで、すでに別の作物を栽培している耕地を野菜畑に転換して、日本に輸出しているのです。 「野菜の命は“鮮度”なんです」と椎名さんは強調します。「いま輸入野菜はむしろ市場を通らずに商社から直接スーパーや外食産業に流れています。このまま輸入が増えて日本の農業が廃れてしまうようでは、市場も困るんです」と市場の悩みを話します。
分析センターで比べてみたら【ブロッコリー】ビタミンC含有量こんなに違う国産が輸入品の4割増農民連食品分析センターが、千葉と長崎の国産ブロッコリーとアメリカ産のブロッコリーのビタミンCの含有量を分析したところ、国産ブロッコリーがともに四割近くビタミンCが豊富であることが判明しました。分析方法は、ブロッコリーを粉砕してその野菜汁をアスコルビン酸(ビタミンC)を計る試験紙にひたし、その反応をRQフレックスという機械にかけてはかるというもの。アメリカ産ブロッコリーは、分析直前に都内のダイエーで購入しました。
(新聞「農民」2000.3.20付)
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[2000年3月]
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