「農民」記事データベース20000313-441-09

国際シンポパネリスト(イタリア)

オノラティーさんの素顔

―関西訪問に同行して― 杉田 史朗(分析センター顧問)


 国際シンポジウム(2月20〜21日)の翌日から26日までの五日間、イタリアから来日したオノラティーさんの近畿地方への農民・消費者との交流会に同伴しました。

陽気で気さくな“地中海の太陽”

 五日間、通訳の仕事でたいへんだったように思いますが、自分でも不思議なくらい疲労を感じませんでした。オノラティーさんは哲学者のような風格のある人ということを聞いていましたし、シンポジウムのポスター写真のりりしい顔のイメージから、初対面のときはだいぶ緊張しました。しかし、実際は地中海の太陽の下で農業をしている陽気できさくなおじさんというのがオノラティーさんの素顔です。養鶏の話を楽しそうにしますし、畑では農家の方に、熱心に柿の木の剪定法なども尋ねていました。また、日本の盆栽がたいへん好きで、自分でも盆栽を何鉢かもっているそうです。

平和問題から農業技術まで

 しかし、電車での移動中や食事をしながらの話題は、農業問題はもちろん、政治や平和問題、民族問題、哲学にまで及び、たいへんに見識の深さにも驚きました。大阪では、新婦人で平和運動にも取り組んでいる尾川さんと同行しましたが、コソボ問題や君が代、日本国憲法などについても語り合いました。

 農業をめぐる科学技術についての意見交換もでき、これからどのような道を歩んだらよいのか悩んでいる私には、たいへん勉強になりました。とくに生物多様性と関連して、伝統的な品種の復元や普及をこれから世界的に進めていこうと考えており、農民連での取り組みも世界に伝えたいということをさかんに言っていました。

大甘党、日本料理もお気に入り

 旅行の間は、日本食を積極的に食べていました。今回はじめての来日だそうですが、アジアの国々には何回か訪れており、箸を使うのがたいへん上手でした。

 今回、オノラティーさんが楽しみにしていたのが、大阪での伝統食の晩餐会です。手作りのおすしや、葉ごぼうのてんぷらなどを、おいしいおいしいといってほおばっていました。みそおでんのこんにゃくが一番のお気に入りでした。

 オノラティーさんは、お酒は全く飲まないのですが、甘いものが大好きです。伝統食のデザートに黒砂糖で甘くしたあんこの菓子が出たのですが、気に入り、翌日の新幹線の中でも三つほど食べていました。食事の後には濃いめのコーヒーとケーキが欠かせないようです。日本茶にもお砂糖を入れて飲んでいました。

包容力あるNGOのリーダー

 私の下手な英語も、いやな顔一つせずに相手をしてくださいました。世界には文字の読めない農民がまだたくさんいるなかで、世界のNGOと運動をしてきた人ならではの包容力だと思います。国際的な大衆運動のリーダーとしてたいへん魅力的な方です。

 イタリア国内だけでも方言が豊富なので、欧州で農民に運動を呼びかけるときにはたいへんな苦労があるそうです。これからは、世界の農民が食の安全、地球環境を守るために立ち上がらなければなりません。日本の農民の厳しい現実を世界に訴えるためにも、世界に草の根のネットワークを広げるためにも、世界にむけて「もの言う農民」が求められていることを実感しました。

 オノラティーさんは、日本の農民の現状や運動の取り組みについての情報が、世界のNGOの活動にたいへんに重要であると言っていました。今回のシンポジウムでオノラティーさんの素顔にふれることができ、友情と連帯のきずなをいっそう強めることができたことは、大きな成果であったと思います。

(新聞「農民」2000.3.13付)
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2000年3月

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