「農民」記事データベース20000313-441-05

処理施設なんと三ヵ所も進出

“産業廃棄物から自然と環境守れ”

「守る会」や農民組合が猛反対/千葉・山田町現地リポート


■自然発火

 「ここで去年自然発火があったんです」

 青いシートにおおわれ、鯨の巨体のように野積みされた廃棄物を指差したのは、山田町農民組合の組合長で町議会議員、そして「山田町の自然と環境を守る会」事務局長として活躍している宇井正一さんです。

 山田町は千葉県北東部に位置した文字どおり山と畑、田んぼの町。北の方向には利根川が流れています。

 この山田町に一昨年から昨年にかけて、産業廃棄物等の処理施設が三カ所も計画されるという問題が起きました。

■正体不明

 宇井さんによると処理施設の建設をすすめているのは、ヤマキ興産、チバデンマイティ、翔雅の三業者。しかし、ヤマキ興産は企業から出た廃油を再生して売る計画をしていますが、会社の住所には事務所も存在していない状態です。また、チバデンマイティは、現在の鳩山工場に、千葉県内の廃棄物(廃油・糞尿など)や感染性廃棄物(注射針・廃血液など)を集めて、コンクリート固化する施設を計画。その後、取り下げたという話も出ていますが、同社は、今まで産業廃棄物の不法投棄で千葉県から再三行政指導を受けながら従わずに高上雅之社長が逮捕されるという前歴があります。同じ社長が経営する翔雅は、千葉県の各自治体の焼却場で出される焼却灰を集めてコンクリート化する計画をしているということです。

 当然、ダイオキシン問題、水源問題、大気汚染などが心配され、それぞれの地域の住民から不安と疑問の声が上がり、昨年の十月に「山田町の自然と環境を守る会」が結成されました。

 米野井区で電気設備工事を営む青柳徹さんは、宇井さんらが反対運動をしているのを知り参加しました。

■景観破壊

 青柳さんは「この地は古墳群があったところ。森には神社や観音堂、文化財があり、年寄りたちは産廃ではなく、この地にふさわしいものに来てほしいと言っています」と集めた資料を広げて熱心に説明します。

 米野井の処理施設予定地の向かい側は、田畑が広がり、その背後には豊かな森が構える場所です。その中で「ヤマキ廃油工場建設反対」の看板がひときわ目立っていました。

 鳩山区でゴボウやニンジンをつくっている水内良一さんは「守る会」に参加している農民組合員です。産業廃棄物の自然発火があった後、消防車が週に三回くらい見まわりにきたといいます。

■請願署名

 農民組合では今年一月の総会で、組合員は「守る会」に参加して、環境を守る運動を積極的に推し進め、施設建設を完全に断念させるまで活動を継続していこうと活動方針で訴えています。

 また、「守る会」では、昨年産廃処理施設の建設に反対する請願の署名運動に取り組み、四千三百九十名の請願人名簿を十二月議会に提出しました。これは、山田町の人口の三六%、有権者の四七%にあたります。請願書は現在継続審議になっており、三月定例議会で採択されるように運動を強めています。

 「守る会」の会長で町議会議員、環境審議委員長をされている玉造允さんを訪ねました。

 玉造さんは開口一番、私は自民党員と言い、政党を越えて環境を守っていかなければならない。処分場が増えて公害が出たら、風評被害を受ける。山田町の農産物が心配だ。公害が発生したら、一カ月や二カ月で解決できるものではないと語りました。

■超党派で

 また、玉造さんは「自民党の人の中には、共産党の主導でだめだと言う人もいる。私は内容に道理が通っていればいい。私のところには、農家からも苦言と励ましの電話がかかってくる。産廃は穴を深く掘るが、底から流出すると地下水汚染の心配があり河川に流れ出た場合水稲に影響する。まわりの市町村とも協力してやめさせるまですすめなければならない」と断固とした口調で語っています。

 「守る会」事務局長の宇井さんもこう語っていました。「産業廃棄物・残土の埋め立てなどをいっそう警戒し、行政とも協力しながら運動を強化していくつもりです」

(村上登美子/新聞「農民」2000.3.13付)
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2000年3月

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