自民農政の無能の証明どこまで落ちる 日本の食料自給率7000万人分を外国に依存
「将来の食料は大丈夫なの?」「日本農業の発展に真剣にとりくんで欲しい」――こんな国民・農民の心配や願いをよそに、農水省は、さらに食料自給率が下がる試算をしていることが明かになりました。日本のカロリーベースの自給率は四〇%(98年、実際は三九%)。日本の人口一億二千万人のうち七千万人分の食料は、輸入に頼っています。 九五年の穀物自給率を、FAO(国連食糧農業機関)資料をもとに世界の国々と比べると、恐竜の背のようなグラフの尻尾の先のほう。日本より低いのは、砂漠や極北の農業に適さない国か、小さい島々からなる国土のほとんどない国ばかり。この上さらに下げようとは、民族の存立に関わる重大な問題です。 農水省が二月十四日の食料・農業・農村政策審議会に示した二〇一〇年の試算値によれば、カロリーベースで二〜三ポイント下がって三七〜三八%。ミニマム・アクセスを続ける一方、史上最大の減反を押し付けている米と、これから“本作”に位置付けようという小麦・大豆がせいぜい横ばい。価格保障の廃止をねらっている牛乳・乳製品、輸入が急増している牛肉・野菜は四〜六ポイントの大幅な低下です(図右)。 農水省は「あくまで現在の消費と生産のすう勢が続くと仮定した場合」などと言い訳しますが、小麦や大豆などあらゆる作物の価格保障をなくし、輸入の急増にまかせ、農家の生産意欲をなくす政策を続けるならば、横ばいどころかさらに下がる可能性があります。 自民党や農水省は、「食の嗜好の変化が自給率低下の原因だ」「一ポイント上げるのもたいへんだ」と、さかんに宣伝する一方、食料・農業・農村基本法(新農基法)にもとづいて三月下旬に決める基本計画では、食品残さの再利用など消費量を操作し、自給率が上がるかのように見せかける“厚化粧”をほどこす可能性もあります。しかし、これはあくまで近々ある総選挙を意識してのこと。その程度しか自給率向上の手立てを示せない、また示そうとしない農水省の無能・無策ぶりは明かです。
農産物価格の保障と輸入食品の規制こそWTO協定の根本的改定を農民連は、新農基法案の審議の過程から、この法案は「『消費者には食い改めろ、農家には歯を食いしばって作れ』というもの。自給率が上がるわけがない」と批判すると同時に、具体的な手立てを示してきました。 第一は、農産物の価格保障を充実させること。農民連の小林節夫代表常任委員は、国会での公聴会で、「価格保障をなくすることは、農民の生産意欲を奪う。欧米なみに価格保障予算を増やすべき」と公述しました。これは、公共事業や銀行支援に注ぎ込む予算の何百分の一でできることです。 第二は、米をはじめ輸入を制限すること。二月二十〜二十一日に開かれた「WTOに関する国際シンポジウム」では、自由化と国際化を強要するWTOの根本的改定が、世界の農民の共通する声であることが示されました。豊作になったら国産米をエサ用に投げ売り処分――という逆立ちしたやり方をやめ、いらない外米の輸入はストップすべきです。
結論は一〇〇%自給しかない広島JA三次代表理事組合長 村上光雄氏わが国の食料自給率の設定について他人事のような計数議論が展開されているが、このことは自分の食物として考えてみると、結論は一つであり、一〇〇%である。 誰も自分の食物が他人まかせでよいと思う者はいないはずである。 一〇〇%自給を基本目標にした年次計画を検討しないと、結局は現状の追認になってしまう。 お互いに計数に振りまわされないようにしたいものである。
スイスの自給率向上の施策示し農相に実行迫る共産党中林衆院議員日本共産党の中林よし子衆院議員は、二月二十四日の農水委員会で、スイスの施策を紹介し、自給率向上の道筋を示して実行を迫りました。 中林議員が紹介したのは、スイスの主食食料の自給が憲法に明記されていることや、厳しい国境措置・輸入管理とその差益を利用した国内農産物の価格支持、農民に対しては一般企業就職者の所得と同水準を基準とした生産者価格の保障など。 玉沢農水大臣は、「それがすべて実行されているとすれば、確かに自給率の向上に役立っている」と認めました。
乳価支持制度アメリカでは「廃止」延期へ農水省が廃止しようとしている加工原料乳の価格支持制度。アメリカは逆に廃止を延期しようとしています。これは二〇〇一年度のアメリカ農務省予算案(総額七兆円)に盛り込まれたもの。 またアメリカ農務省は先に、価格低迷に苦慮する酪農家に対する直接補助金の交付を発表。グリックマン農務長官は「価格が安定するまでの間、多くの中小酪農家が経営を継続するのを支持する」と述べています。
(新聞「農民」2000.3.13付)
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[2000年3月]
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