「農民」記事データベース20000306-440-10

関西の各地を視察・見学

イタリアと韓国の三氏 各地の農村を訪問・交流

オノラティーさん大阪では記念講演


 国際シンポが終わった翌二月二十二日、休む間もなくアントニオ・オノラティーさんは関西の農業の視察と交流に出発しました。

 滋賀県では、農民連県連の事務所で内藤会長以下八人の仲間の皆さんと農業経営についてオノラティーさんの質問をはさんで交流しました。

 「外米を輸入しながら減反するとは」という稲作農民の怒りをこめた告発や、規模拡大してもミニマム・アクセス米の輸入で米価が暴落した話にオノラティーさんは共感し、雪に覆われた琵琶湖畔の転作野菜などを視察しました。

 二十三日には和歌山県の那賀町を訪問し、同町井上助役や和歌山食健連や農民の人たちと交流しました。また、紀ノ川農協を訪問し、二十四年前に十六世帯で発足した農民組合が八百五十世帯の農協にまで発展した状況を聞いて、「ヨーロッパの消費者は、より安い価格の農産物に関心を寄せているが、日本では消費者が安全な食べ物を望む一方で日本農業を守る運動に農民とともに取り組んでいる」と感心していました。そして、同町の辻淳伍さんの柑橘園を視察したり、庭先の盆栽にカメラを向けたり、丸井雅夫さんの消費者とともに作っているタマネギの水田を視察し、消費者と農民の共同に深い関心を示しました。

 二十四日には、大阪市内で消費者・一般市民、近畿地方の農民など三百七人を前に記念講演を行いました。

分析センターも訪問

 アントニオ・オノラティー氏は二月二十五日、農民連食品分析センターを、杉田史朗分析センター技術顧問、石黒昌孝所長と連れ立って訪問。八田純人所員が準備した英語の分析センターの案内テキストに目を通 しながら、説明を受けました。懇談では食の安全を守るにはどうしたらいいか、どんな運動が必要かなど、積極的な経験交流が交わされました。

 オノラティー氏は「分析するサンプルはどうやって選んでいるのか」「日本の農薬基凖はどうなっているか」「遺伝子組み換え分析の作物は何か」など、次々と質問。八田所員が米の鮮度判定キットを実演して見せると、「オー、グッドアイディア!」。

 石黒所長は「この分析センターは企業からも政府からも独立し、農家と消費者のカンパで成り立っており、大きな期待が寄せられている」と話しました。

 


韓国の両氏は岩手、埼玉で

 いわてコメネット主催による「WTOに関するいわてシンポジウム」が、韓国の全国農民会総聯盟議長の鄭光勲氏を迎えて二月二十三日、盛岡市で開かれ、百人が参加しました。

 鄭氏は「WTO農業協定が韓国農民に与えた影響」と題して話しました。鄭氏は質問に答えて「産直に取り組んでいる団体がある。農業を守る運動は、昨年から農民と労働者が一緒にやるようになった。農家の負債は深刻で、その原因の大きな一つが生産物の価格暴落である」と指摘。「日本と同様、韓国でも食文化の破壊が進められ、キムチの消費量 は年々減ってきている。『パン食だと背が伸びる』との宣伝がされている」ことも明らかにしました。

 また、鄭氏は「農民には共同の敵があるのに、お互いがつぶしあっている。WTOへの批判は各国で広がっている。大衆が手をつなげば、われわれは勝つ自信がある」と強調、参加者を大いに励ましました。

 韓国・全国農民会総聯盟議長の鄭光勲氏と同事務総長の劉相郁氏は二月二十二日、埼玉 県加須市のキュウリ農家や稲作農家を視察しました。これには農民連の谷口一夫事務局長、埼玉 農民連東部センターの小山欽次会長らが同行。

 キュウリの収穫真っ最中の小山薫さんの温室を訪れた劉相郁氏らは、栽培技術やハウスの設備費、キュウリ価格などを質問。小山さんは「四人家族で経営しているが、サラリーマンの一人分の収入しかない。しかし、農民連が政府と交渉したりして頑張ってくれているので助かる」などと答えていました。劉氏は「農産物の低価格で韓国農民も泣かされている」とその実態を紹介しました。

 稲作中心の小山欽次さん宅では、モミ殻と米ぬかで堆肥作りをしている現場を視察。その後、一行は県加須農林センターを訪れ、融資制度などを中心に県農政について聞きました。
(高橋利男)

 二月二十三日夜、劉相郁氏を迎えて東京で開かれた「韓国農民団体代表との交流・連帯パーティ」(主催・食糧の生産と消費を結ぶ研究会)には約二十人が参加しました。

(新聞「農民」2000.3.6付)
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2000年3月

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