南アルプスのふもと・伊那谷で親子三代力合わせ農に生きる長野の下平哲夫さんからの便り
十年ぶり故郷にもどって…すっぽりと雪に覆われた南アルプスの麓、天竜川の河岸段丘に美田が広がる長野県伊那市。上伊那農民組合員の下平哲夫さん(28)は、二年前の秋、都会での勤めを辞め、故郷に帰って、父・和夫さん(60)、祖父・勝さん(90)とともに親子三代、力を合わせて農業をしています。哲夫さんから編集部に届いた手記を紹介します。妻(亜由美さん)子とともに十年ぶりに故郷に戻りました。忘れがたい思い出がいっぱいつまった私の故郷。連れ帰った私の子どもをあやす父の姿に、幼い時に私にくれた父のぬくもりを思い出しました。 私の家は代々農家ですが、戦後の社会情勢の変化で両親は共働きをし、農業は暮らしの中心ではなくなりました。技術革新により農作業は楽になる一方、先祖代々のよき知恵が忘れ去られてきているように思われます。
自然の営みの中で生きよう我が家では四年前から農業高校で長く教鞭をふるってきた父が有機・無農薬の栽培に切り替え、米と野菜を作っています。長く続けてきた農薬・化学肥料の栽培を見直し新しい試みを始めた父に敬意を感じます。これからの時代の農業と人々の暮らしについて、父と私は、「人は善意に生き、自然の営みの中に生かされている。だから、すべてを土に帰し、土に因って生きよう」という一致した考えを持っています。
家族農業の良さ受け継いで祖父は、九十歳で現役です。四時半に起きて、田の水見をします。自然の中で家族が協力して農作業をし、畦道でお茶を飲む。子どもたちは自然の教科書で学び、年寄りは無理をせず、若者は汗かき働く。家族農業は健全であり、心豊かです。春に播き、秋に刈る。寒い冬を耐え忍び、また暖かい春を迎える。季節を感じながら暮らす農民の生活は趣深いものです。祖父から父、そして私にと受け継がれた農民の暮らしを守っていきたいと思っています。
新しい胎動の春を待つ思いいま、祖父は味噌づくりの大豆を準備し、父は野菜の種を播き、今年の展望に胸をふくらませています。私も、妻の胎内に新たな生命が宿り、希望を胸に春を待っています。秋には豊かな実りと、元気なうぶ声が聞けることを楽しみにしています。全国の農家のみなさん、今年もがんばりましょう。都会の暮らしに疲れた後継者のみなさん、思い切って田舎に帰って農業をしませんか。そこに、本当に豊かな暮らしがあるかもしれませんよ。 我が家の有機・無農薬米を食べて下さる方、ご連絡をお持ちしています。Fax〇二六五-七三-〇七八五(上伊那農民組合)
(新聞「農民」2000.2.28付)
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[2000年2月]
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