悪声のツケ、加入農家にしわ寄せこれはひどい!「農業者年金制度改革大綱(案)」の中身農民の老後の生活安定に大切な農業者年金制度。受給者が七十五万人、加入者が二十九万人います。ところが、スタートして三十年の節目に農水省は、「財政破たん」を理由に大幅に給付をカットするなど、農民に恩を仇でかえす仕打の「農業者年金制度改革大綱(案)」を打ち出しました。「農民の老後まで切り捨てるつもりか」と全国から怒りの声が上がっています。「改革大綱(案)」のひどい中身は――。
75万人受給者から平均30%もカットまるで国家的詐欺だ!「苦しい経営の中でやりくりして何とか掛け続けてきた年金が、やっともらえるようになったらバッサリ削られる」――こんなバカげた話が他にありますか?農水省が昨年末に出した「農業者年金制度改革大綱」(案)は、全国七十五万人いる受給者の年金を平均三割(経営移譲年金35〜25%、老齢年金5%)もカットするというとんでもないもの。「公的年金だと思って掛けてきたのにだまされた。まさに国家的詐欺だ」――全国から怒りの声が起きています。 農水省は、加入者が減って負担しきれなくなったと言い訳します。しかし、ミニマム・アクセス米をはじめ、次々と農産物の輸入を自由化し、価格を暴落させ、減反を強化し、農業経営を成り立たなくしてきたのは、他ならぬ政府・自民党です。年金の受給者は、そうした中で歯を食いしばって農業を続けてきた方々です。その年金を削減するとは、恥も外聞もない話です。 農水省は、国庫助成を積み増しするから農家にも負担をと言いますが、とんでもありません。少しでも悪いという気持ちがあるなら、国が全額負担すべきです。国に財源がないとは言わせません。銀行には六十兆円もつぎ込んでいるのですから。それに、昨年、業者から接待を受けていた農水省職員十八人が処分を受けましたが、農水省の今年度予算の公共事業費は一兆八千億円。その不用不急の分を一割回せば、お釣りがきます。
46歳未満の加入者は82歳以上生きても掛け損とくに女性には大打撃「積んだ保険料が戻ってこない年金なんてあるか」――。 二〇〇〇年四月時点で四十六歳末満の加入者が、平均余命の八十二歳まで生きても年金受給額は支払った保険料の総額には達しません。「掛け損」になります。 しかも、男性ばかりではありません。女性の加入者にも大きな犠牲を強いるものです。女性の加入が認められたのは一九九六年。農業委員会などは、「政策年金だから大丈夫」といって女性を加入させようと必死に勧誘しました。 北海道では昨年末で千三百三十人の女性が加入しています。ところが、この四年間にかけた保険料のうち、三割くらいしか受給できないケースも生まれます。「農協のみどり年金をやめて加入したのに、どうしてくれるの!」という悲痛な叫びと怒りの声が上がっています。 いまの農業者年金制度は、若い世代の保険料で受給者の年金を負担する「賦課方式」。加入者一人が二・五人の受給者の年金を負担しています。「このままでは、あと二〜三年で破たんする。継続するためには加入者、受給者の双方にがまんしてもらうしかない」(農水省の渡辺構造改善局長)と、「積立方式」に替えるというのです。 農業者年金は、もともと農民の老後を保障するためにつくられた公的年金。同じ公的年金の厚生年金などは国が保障しています。農業者年金も国が助成するのは当然です。 だから福岡県椎田町農業委員会では「少なくとも現在の受給者の給付水準を維持し、加入者の“掛け損”を回避するなど、政府の責任において解決」することを求める建議を二月十四日に可決しています。いまこそ大改悪反対の世論と運動が急がれます。
加入者減らす原因は農業つぶしの悪政に総選挙で審判下そう!「加入者が減少し、受給者の負担をまかないきれない」――農業つぶしの農政を進めてきたツケを農民にしわ寄せするなど、もってのほかです。 農業者年金制度は、経営を委譲した人に年金を支給し、農業経営の世代交代や規模拡大を促進しようとしたもの。「離農年金」という性格をもち、制度そのものが加入者の減少を引き起こすという矛盾を抱えて発足しました。 しかも、農水省は「新政策」や新農基法で、九五%の農民を切り捨てる農政をすすめ、農業を継ごうとしても、継げない状況に追い込んだ責任はほおかぶり。これでは、加入者を増やそうとしても増えるわけはありません。農民にはまったく責任がありません。国の責任です。 「年々下がる食料自給率に見られるように輸入依存の体質は一段と加速されており、この抜本的な農政の変革なしに改革案も近い将来崩壊の途に着く」と秋田県西目町農業委員会は反対の建議を採択しています。「輸入依存の体質」の農政を変えることなしには、加入者も増えません。 農業と農業者年金制度を守るため、大改悪をねらう自自公勢力に総選挙できっぱりした審判を下だそうではありませんか。
(新聞「農民」2000.2.28付)
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[2000年2月]
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