「農民」記事データベース20000221-438-01

国連貿易開発会議総会を前に国際フォーラムに参加して

「農業をWTOからはずせ」は世界の農民の共通した声

途上国はじめ各国参加者強調

 「『農業をWTOからはずせ』の運動を前進させよう」というスローガンをかかげた国際フォーラムが二月九、十の両日、タイ・バンコクで開かれました。シアトルのWTO閣僚会議決裂後、初めてのこのフォーラムには、日本から農民連代表(真嶋良孝事務局次長)が参加しました。現地バンコクからのリポートです。


“食料は自国で確保を”

多国籍企業の専横を批判

バンコク現地リポート 真嶋良孝

 会場のチュラルンコン大学医学部の講堂には、アジア、アフリカ、中南米など発展途上国の農民組織やNGOを中心に四十一カ国から三百人が集まりました。アメリカ・シアトルでのNGO集会には発展途上国からの参加があまり多くなかったので印象的でした。

 「農業をWTOからはずせ」という要求は、シアトルで初めてかかげられたものですが、あの劇的な閣僚会議決裂後、この要求が着実に定着しつつあるこれがフォーラムに参加しての第一の感想です。

 とくに東南アジアでは、貿易の自由化とともに、国内の農業政策の後退が急激に進んでいることの告発が相次ぎました。「われわれの命と生活、コミュニティを崩壊させるWTOは農民の敵だ」(タイ代表)「土地所有権も自由化され、外国企業が七十五年間の土地貸与を許可された」(フィリピン代表)などなど。

 また「もの言わぬ農民」といわれてきたタイ東北部の農民がたくさん参加し、世界の人々の前で、世界銀行が推進したダムの乱開発に対する批判や農民の窮状を次々に訴えていたことも印象的でした。

“共通の敵”に団結してたたかおう

 第二に、シアトルで印象的だったのは、WTOのもとで多国籍企業が“食糧大国”といわれるアメリカやカナダの農民から買いたたいていることでしたが、今度は発展途上国の人々の生の声で、アメリカ、多国籍企業、WTOが各国の農業と農民の生活を破壊している実態を聞くことができました。WTOのもとで世界中の農民が苦しんでいること、だから団結して立ち上がろうという呼びかけが会場に満ち満ちていました。

 とくに途上国では、経済危機が進むなかで、国民の主食の生産放棄と「輸出作物」への転換が強要されているこれが共通の事態です。

 フィリピンでは、米のミニマム・アクセスが押しつけられ、しかも政府はそれを大幅に上回る輸入をしているといいます。その裏で外国資本(とくにアメリカ)が生産も輸出も牛耳って大もうけという事態が進行しています。

 ネパールの代表は「WTOが成立した五年前までは食料輸出国だったが、いまは純輸入国になってしまった」と告発し「農民たちはWTOなどの情報をつかんでおらず、ネパールの農民組織はまだ小さいが、フォーラムに出て、私たちは孤立していないことを実感した。世界中の家族の一員としてたたかいたい」と、切々と訴え、大きな拍手に包まれました。

「日本の農民の要求と一致」に確信

 「外圧によって穀物を生産できなくさせられ、食料不足が起きている」「まず自分たちの食料を確保することが第一だ」という発言がたくさん出ました。

 自国の食料は自国で生産するべきだ、これを邪魔しているのがアメリカ、多国籍企業、そしてWTOであり、世界中の農民が立ち向かうべき相手は共通だというのが、発展途上国を含めて共通した意見であり、日本の農民とも大いに一致することを確信しました。

 日本政府は「途上国は農業国。先進国に農産物の市場を開放を求めている。だから、WTO農業協定を改定せよという要求は、途上国の支持を得られない」と言っていますが、これがどんなにデタラメかが浮きぼりになったと思います。

 まともな改定を提起せず金の力で食糧を買いあさるこういう姿勢を改めないかぎり、日本が国際的「孤立」を招くことは必至です。私たちが日本国内での運動を大いに強めること、また、こういう点をふまえた国際的な連帯と共同を発展させることが求められていると思いました。

 二日間の会議の合間に、フィリピン、ネパール、インド、ノルウェーの農民組織やNGOと、わずかな時間でしたが交流することができました。

 とくにフォーラムを主催したフィリピンのNGOの代表は、私の手をにぎりしめて「よく日本から来てくれた」と歓迎してくれました。立ち話程度の交流でよくわかりませんでしたが、おそらく、アメリカべったりの日本に、まともな農民の運動があることを初めて知ったためでしょう。今後の交流と情報交換を約束して別れました。

NGOの代表者会議でも声明発表

 また、私は参加できませんでしたが、七〜八日にはNGO代表者会議(四十カ国、百六十人参加)が開かれ、農業・食糧の問題を含む広範囲な課題を討論し、「国際通貨基金(IMF)や世界銀行、WTOなどの国際機関による各国政府と市民の民主的権利の剥奪に反対する」という声明を発表しました。

 声明は農業について「食糧主権は各国の基本的権利であり、食糧安全保障はすべての国民の権利である」「食糧安全保障の実行を抑制する農業貿易ルールはWTOから取り除かれなければならない」「アグリビジネスの拡張反対」と強調しています。

 バンコクでは十二日から十九日まで国連貿易開発会議(UNCTAD)の第十回総会が開かれます。UNCTADも国際機関の一つですが、世界貿易に対する発展途上国を含む各国の意見を反映する民主的協議の場です。NGO代表者会議にはUNCTADのリクペロ事務局長も参加し「NGO代表の要望を総会に提起する」と語りました。

(新聞「農民」2000.2.21付)
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2000年2月

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