開発先行するアメリカ遺伝子組み換えイネ、2年後「日本上陸の可能性」強まる日本でも農水省・大企業が実用化急ぐ
遺伝子組み換え(GM)イネの開発競争が激化しています。世界初のGMイネの商業生産はアメリカが一歩リードしており、早ければ二〇〇二年にはGM米の一番乗りとしてアメリカからミニマムアクセス米に混入して日本に上陸してくる可能性が強まっています。 一方、農水省は日本人の主食の米だけに負けてはいられないと、GM米の自国開発めざして三菱化学と共同開発した病気に強い組み換えイネの評価試験をすでに終へ、近く厚生省に安全審査を申請。また莫大な国費を投入して民間企業とベンチャー企業を設立、イネの有用遺伝子の特許取得、組み換えイネの実用化に積極的に乗り出しています。
米社が除草剤耐性コシヒカリイネの遺伝子組み換えは、ササニシキ、コシヒカリのように品種改良を積み重ねてきたため難しいとされていたが、アメリカがパーティクルガン法(金の微粒子に遺伝子をまぶし、高圧で細胞内に打ち込む方法)を開発して一歩先行。モンサント社は除草剤耐性コシヒカリをすでに作出しています。現在、モンサントが茨城県にある自社の隔離圃場で試験しているのは、除草剤ラウンドアップをかけても枯れないように改良したカリフォルニア米M202種(中粒種)。同社は今春にも農水省に環境への安全性確認を申請する予定です。その狙いは、日本の水田でも除草剤耐性が働くかを確かめるとともにコシヒカリなど、日本品種を使った除草剤耐性イネの商業化やコストダウンをうたって乾田直播用の除草剤耐性イネの売り込みです。
三菱化学、日本たばこも乗出すまた今年一月、アグレボ社とローヌ・プーラン社が合併してできた欧州最大の化学農薬企業アベンティス(仏)は、カリフォルニア米の「カルロース」などの中粒種に自社の除草剤パスタに耐性を持つGMイネの商業生産を二〇〇二年からアメリカで始める計画。これは日本の消費者をターゲットにミニマムアクセス米への混入、ビールや菓子など加工用に売り込む狙いで対日輸出承認の手続きを進めているといわれます。国内では、日本たばこ産業(JT)が、モンサント社やゼネカ社(英)と技術提携し、酒造用の低タンパク質米「コシヒカリ」「月の光」などを開発、商品化をめざしています。 また三菱化学(植物工学研究所)と農水省が共同で縞葉枯病に強い「キヌヒカリ」を開発し、すでに農水省食品総合研究所が「コメの成分は普通の玄米と同様安全」との評価試験を行い、近く厚生省に安全確認の申請を行い、国産第一号のGM米として市場流通をめざしています。
農水省は民間企業と新会社設立一方、農水省の管轄下にある生物系特定産業技術研究推進機構(生研機構)は、イネゲノム解明とイネの遺伝子組み換えを積極的に進め、商品化をめざすため、この二月一日に民間企業と新会社を設立。有用遺伝子の特定、特許の取得、遺伝子組み込みに必要なキットを作成して販売、民間の稲作分野の遺伝子組み換えベンチャーを育成、援助していくとしています。
日本の農業、消費者に重大脅威農水省は、今年度予算でも前年比三倍増という莫大な資金を投入してGMイネ開発の国際競争に乗り出そうとしています。しかしこれは日本の農業や農家を守るためではなく、欧米の多国籍企業の企業戦略に協力し、誰も食べたくない遺伝子組み換え米の輸入を拡大し、農民、消費者を苦しめることになるのは必至です。
(塚平/新聞「農民」2000.2.14付)
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[2000年2月]
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