農民連が各地で税金相談会“しっかり記帳、自主申告を”「手引き書」使って論議も活発/茨城・利根町
「みんなで税務署にスクラム組んで行くんだよ。息子が水戸市の会社に勤めていて、税金の還付金は組合費とトントンだけど張り合いがあるよ。それに勉強になる」(一・六ヘクタールの水田農家・岩井静江さん=65)。
税理士も評価する「記帳簿」一月二十五日夕、利根川沿いの茨城県利根町、押付の集落。近くの集会所に農家が十人ほどが集まり、ワイワイガヤガヤ、農民連の税金相談会が開かれました。利根町は、水田単作地帯ですが、都心にも近く兼業化がすすんでいます。茨城県南農民組合押付班の班長・貝塚栄司さん(74)は、「一人で役場に行くと、『もっと収入があるだろう』って言われて、女性はイヤになっちゃうんだよ。出稼ぎに源泉徴収票なんてないのに」と言います。 「収入はごまかさず、経費はチリ一つ残さない」。農民連の税金運動の基本です。農具から、日焼け止めクリームから、ありとあらゆる経費を農民連発行の「農業収入・支出記帳簿」に書きこみ、三月十三日の集団申告日にはそろって税務署に出かけ、強権的な税務調査にも集団で対応しています。 税金を自分で計算して申告するのは納税者の権利。と同時に、この時期、各地で開かれる税金相談会・記帳会は、農家が自分の経営を見つめ直し、情報交流の場。ここで活躍する農民連の「記帳簿」は、税理士からも「あらゆる業種、団体の中でもっとも優れている」と評価されています。
不公平な税制には怒りの声が…農民組合事務局員の村田深さんが、最新の農民連「確定申告の手びき」を使って、税制改正の説明を始めました。「えーと、所得が三千万円を超える人の最高税率が引き下げられました。ここにはいないと思いますけど…」というと、「金持ちは優遇されてんなあ」という声。さらに、「国と地方を合わせた借金は六百四十五兆円。お年寄りから子どもまで一人あたり五百四十万円です。それでも、小渕さんは銀行救済やゼネコン奉仕のばらまき公共事業を続けています」と村田さん。 そうして、いつしか一万五千円に下がった昨年の米価の話に。「せめて二万円は欲しいよ」…、くやしさがにじみます。 工事現場で働く石橋謙一さん(48)は、「俺の稼ぎの方がはるかに多いけど、農業をやめようとは思わないな。世界に飢えた人がいるのに、むりやり輸入させられるのもおかしいし。農民組合で、もっと有利に売る方法を考えたいな」と言いました。 農産物価格が下落しているもとで、農家に重くのしかかる税の負担。九八年の統計でさえ、面積で一・五ヘクタール以下、九割の水田農家が赤字経営。多くの農家が兼業収入で補っています。こうした農業の赤字分を、兼業先で納めた税金から返してもらう還付請求も、農民連がすすめる自主申告運動ならでは。
不当な徴税攻勢には団結し反撃しかも税務当局は、これまでの面積に応じて課税する「農業所得標準」にもとづく申告を廃止しようとしています。各地で、税務署が青色申告を押し付ける説明会を開き、農家から「突然言われても困る」といった声があがるなどパニックが起きています。飛田元雄・農民連税対部長は大会で、「税金は、政治を映し出す鏡。この春、全国で大闘争を展開し、徴税攻勢をはねかえそう」と力強く呼びかけました。今まさに、税金の要求で対話し、農民連に多くの農家を結集するチャンスの時です。
(二瓶康一/新聞「農民」2000.2.7付)
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[2000年2月]
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