[解説]
アメリカの意のままの「政府統一見解」
輸入義務化
「ミニマム・アクセスが輸入義務だと、どこに書いてあるのか」――中林議員の質問に、外務省が大あわてで、ぶ厚い協定書をめくった――。しかし、WTO協定には、ミニマム・アクセスについての具体的な条文はないのだから、どこを探しても出てくるはずがありません。
WTO農業協定に「ミニマム・アクセス」規定が出てくるのは、米の関税化特例措置を定めた「附属書 五」。「最小限度のアクセス機会が、当該加盟国の譲許表…において明記されているとおり…」となっているだけ。
実際、日本の「譲許表」には米のミニマム・アクセス量を九五年に三十七万九千トン、二〇〇〇年に七十五万八千トンと書いています。
国際経済法の権威である石黒一憲・東大教授によると「アクセス」(接近)というあいまいな英語をWTO協定に盛り込ませたのはアメリカ。日本の外務省も翻訳に困り、「アクセス」という英語をそのまま使っています。
銘柄にも味にもきわめて無頓着に「同じ米であれば、安いアメリカ米が売れるに違いない」という独断にもとづいて「アクセス機会を設定させれば、日本は必ず米を輸入するはずだ。もし輸入されないとすれば、市場が閉鎖的なためだ」と、圧力をかけるためです。
“アメリカ・WTOタブー”の政府(羽田政権)は、九四年五月二十七日に、ミニマム・アクセスは「輸入を行うべきもの」、つまり“義務”だという「政府統一見解」を出しました。アメリカの意のままです。
実は、この問題を追及したのは、当時野党であった自民党農林族の大物・保利耕輔議員。「国産米が『過剰』であっても、輸入が義務づけられるのはバカげたことだ」と。
「野党」のときには正論、「与党」になれば、バカげた議論に平気でしがみつく――やっぱり、自民党をも一度「野党」に。
(新聞「農民」1999.3.22付)
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