「農民」記事データベース990322-399-01

「MA(ミニマム・アクセス)米の輸入義務」は大ウソ
関税化・減反の論拠崩れる

政府側、しどろもどろ
共産党中林議員が質問追及に再三答弁不能

衆院農水委

 「ミニマムアクセス米は一〇〇%輸入義務がある」と、国会と国民をあざむいて農民に減反を押しつけ、いままた関税化(輸入自由化)強行の口実にしてきた政府自民党。そのごまかしは三月九日、衆院農林水産委員会での中林よし子議員(共産党)の追及によって完膚なきまでに突き崩されました。この中林質問は野党ばかりか与党や農業団体にも大きな反響を呼び、四月一日からの関税化実施をめざしている政府・自民党を窮地に追い込んでいます。この日の中林議員の質疑のハイライトを紙上再現すると――。

米韓両国は全輸入してない

 中林議員 (あらかじめ委員全員に配布した資料を手にとって)アメリカはアイスクリームを、アクセス数量三百二十八万四千トンに対して二十二万トンしか輸入していないが…。
 堤食糧庁長官 (自信満々で登場)それは民間貿易だからで、それぞれの国内の需給事情や、需要がなければ輸入されない。
 中林議員 では、日本と同じ国家貿易で米がミニマム・アクセスになっている韓国ではどうなっているか。これはアメリカ農務省の資料のコピーです(大臣と委員長にだけ資料=表=を見せる)。この資料では、韓国は全量輸入していない。国家貿易であるのにミニマム・アクセス機会イコール輸入量にはなっていない。それで他国から提訴されているか。これは重大だ。
 (食糧庁長官が不意打ちを食らったように大臣のコピーに飛びついて、あわてて相談)
 堤長官 いま、資料を見たばかりなのでわからない。私の持っている資料では韓国もちゃんと輸入している。
 中林議員 では、このアメリカの資料が間違っていると言うのか。
 堤長官 そうは言わないが、調べて報告する。

コメのミニマム・アクセス量と実輸入量
(精米ベース、単位万トン)
 95年96年97年98年
日本ミニマム・アクセス量37.945.553.160.1
実輸入量40.946.654.463.2
韓国ミニマム・アクセス量5678
実輸入量1.31136

痛いところ突かれて大あわて

 中林議員 政府は一〇〇%輸入が義務だとずっと言ってきたが、それはWTO協定のどこに書かれているか。
(政府委員席一同顔が引きつって蜂の巣をつついたようなパニック状態で、審議は一時中断。外務省の若い官僚三人がぶ厚いWTO協定のページを必死にめくるが…。どこをさがしても条文は見当たらない。答弁を求められた外務省経済局長も答弁どころか、議場に背を向けてその三人と必死に話しこむ。その周りに人垣ができる。農水大臣は席にそりかえって外務官僚を指差して何かを罵っている。官僚たちのこのあわてぶりを見て、野党の議員もニヤニヤしてこの状況を楽しんでいる)
 堤長官 (外務省が答弁できないのでかわりに立って)WTO協定上の根拠ではなく、政府統一見解で対応している。

委員長も「きちんと答えなさい」

 中林議員 要するにそれは、協定の規定ではなく日本政府の勝手な解釈だ。関税化に踏み切らなければミニマム・アクセス米の輸入を抑えられないという根拠も崩れるではないか。韓国のように日本の立場をはっきりさせれば、関税化に踏み切らないでもミニマム・アクセス米はいくらでも削減できるではないか。大臣どうか。
 中川農水大臣 (のらりくらりと政府統一見解をくりかえして答えず、そそくさと席に戻る)
 穂積委員長 ちょっと待って。外務省、きちんと答弁してください。
 外務省大島経済局長 WTO農業協定の附属書のなかに最小限度のアクセス機会が必要だと書いてある。それを踏まえて輸入するべきとの先ほどの政府統一見解ができた。(しどろもどろなくせに早口で聞き取りづらい)

日本政府の勝手な解釈は明白

 中林議員 それは日本政府が勝手に決めただけだ。協定上は輸入の機会を与えればいいだけではないか。このうえ関税化でミニマム・アクセスを抑えることができるから国益だなどと言うのは、二重三重に農民をだますことだ。関税化の撤回を強く要求する(と質問を締めくくり、席を立とうとする…)。
 委員長 ちょっと待って。ミニマム・アクセスの輸入が義務か義務でないか外務省経済局長、もう一回答弁を。(質問の終わった中林議員をわざわざ呼び止めて、政府に再答弁させる。委員長もことの重大性に気づいたのだろう。画期的だ)
 大島経済局長 さきほど申し上げた点をもう一回…(とまったく同じことを繰り返す)
 中林議員 ミニマム・アクセスは輸入の機会を与えただけで、日本政府が勝手に解釈して(全量輸入の)政府統一見解を出したにすぎないことが明らかになった。
 (傍聴席 拍手が禁止されているにもかかわらず、はからずも「よし!」というかけ声や、拍手が起きる。
 答弁席 椅子に崩れる者あり、議場を走り去る者あり)(関連記事2面)

各方面に大きな反響
民主党「関税化反対」決める

 アメリカ農務省の資料をもとに韓国の例を挙げ、政府の勝手な解釈を追及した中林議員の質問や藤田議員らの活躍は、各方面に波紋を広げています。
 「日本農業新聞」(三月十二日付)は「MA米は本当に一〇〇%義務か。協定の解釈めぐり議論」という見出しで報道。「この議論は米の輸入量を減らせる可能性を秘めているだけに関係者の関心も高く、全国的な広がりを見せている。与党・自民党農林幹部の中にも、MAの削減を模索する意見もあり、農水省は議論の広がりを食い止めるのに躍起だ」と、その反響の大きさを伝えています。
 これまで関税化法への態度をはっきりさせていなかった野党第一党の民主党は、十一日の政調審議会で(1)高関税を維持できる保証がない(2)決定が拙速で、国民的議論をしなかった――などの理由をあげ、正式反対を決定しました。これは全国からの農民の要請や世論、共産党議員の国会論議の反映もあり、今後の審議に大きな影響を与えるのは必至です。

(新聞「農民」1999.3.22付)
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1999年3月

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