「農民」記事データベース20160905-1228-06

沿岸漁業の未来づくりフォーラム


 全国各地で水産資源が減少し、漁民の経営が深刻になっている中で、沿岸漁民が中心になって現状を打破しようと、全国沿岸漁民連絡協議会準備会(全国漁民連)と21世紀の水産を考える会は、8月20日、東京・築地市場で沿岸漁業の未来づくりフォーラム「沿岸漁民が訴える現行漁業政策・制度の問題点」を開催し、会場いっぱいの約70人が参加しました。

資源と沿岸漁業守るため
まき網漁の規制が必要

 資源が枯渇して

 6道県の漁業者がそれぞれの地域の深刻な問題点や、持続可能な漁業をめざす自主的な取り組みを報告しました。

 北海道の「持続的マグロ漁業を考える会」高松幸彦さんは、「焼尻島では、2000年に100キログラム前後のマグロ2本が水揚げされてから一切水揚げがない」と厳しい状況を紹介。「資源に影響を与えているまき網漁の漁獲を抑えなければ資源が枯渇し、立場の弱い沿岸漁業者の生活が成り立たない。すでにあきらめる漁業者が出てきている」と語ります。

 「ヨーロッパでは沿岸漁業を重視し、まき網漁業を規制しているが、日本は大規模に甘く沿岸漁業を見捨てているように思える」と国の漁業政策を批判。「小規模零細漁業者の維持のためにまき網の規制をこれからも強く訴えていきたい」と話しました。

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沿岸漁業の将来について語り合ったフォーラム

 岩手県漁民組合の瀧澤英喜さんはサケの刺し網漁の許可を求める「浜の漁民一揆」訴訟のたたかいを紹介。菅野修一さんは漁民組合から2人立候補して当選した海区調整委員選挙について発言しました。

 菅野さんは選挙を振り返り、「1人より2人の力で漁民の要求を海区調整委員会に反映させていきたい」と決意を述べました。

持続可能な漁業めざして
豊かな海を将来に引き継ごう

 漁民連の役割も

 「千葉県沿岸小型漁業協同組合」の鈴木正男さんと本吉正勝さんがキンメダイの漁場管理とまき網漁業との協定について報告しました。

 「何十年も海で働いていて、海の様子がよく分かる沿岸漁業者の声を聞いてこそ資源管理ができる。みんなで声をあげていく必要がある。そこに全国漁民連の役割もある」と強調しました。

 三重県の「かつお資源を守る会」の岡田三市さんは、法の網の目をすりぬけるようなまき網操業で、沿岸釣り漁業の水揚げ高が減っていると報告。「一本釣り漁業者とまき網漁業者双方が共存共栄していけるルールや仕組みを作り、資源管理をすることが豊かな海を将来に引き継ぐことになる」と訴えました。

 和歌山県東漁業協同組合の杉本武雄さんは「カツオ資源の減少が深刻な問題となっている。熱帯域での大型まき網漁による乱獲に伴う資源の減少以外考えられない。規制が必要」と強調しました。

 長崎県対馬市では、「延縄漁業対策協議会」が遠洋まき網組合の漁労長や経営者と交渉を重ね、去年の冬から暫定的な操業自粛期間を設けることで合意したと、同協議会の宇津井千可志さんが報告しました。「去年の冬と今年の春に、ヨコワ(クロマグロの稚魚)操業を1カ月自粛した結果、対馬近海に十分な魚群がめぐるようになりました」と成果を紹介しました。

 信頼関係築いて

 討論では「現場の漁師同士だけではなく信頼関係を築いて、まき網などと話し合いできるようにしている」「漁師が団結して交渉など行動していくことが必要」など様々な議論が時間いっぱいまで行われました。

 全国漁民連準備会はフォーラムに先だって2016年度総会を開催し、2018年に結成総会をめざすなどの新方針と役員を決めました。

(新聞「農民」2016.9.5付)
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2016年8月

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