「農民」記事データベース20150223-1154-02

安倍首相の施政方針演説について

2015年2月13日
農民運動全国連合会会長 白石淳一


 一、安倍首相は2月12日の施政方針演説で「この道しかない」と叫び、総選挙で「この道をさらに力強く前進せよ」という国民の意思が示されたと称して、農政改革や社会保障改悪、集団的自衛権関連法、憲法改悪など「戦後以来の大改革」を国民の抵抗を排除して断固として進めることを宣言した。

 とくに改革断行の最優先事項として農業をあげ、「農政の大改革は待ったなし」と力みあげて、「60年ぶりの農協改革断行」や初の「農業委員会制度の抜本改革」、「農業生産法人の要件緩和」などによって、農協を解体し、企業の農業参入と大多数の農家を切り捨てる構造改革を強行することを宣言した。

 さらに「TPP交渉は最終局面」にあるとして、米や牛肉などの大幅譲歩を強要するアメリカと一緒になって交渉をリードし、「早期の交渉妥結を目指す」ことを強調した。

 二、安倍政権がねらう「農政の大改革」は、関税撤廃を原則とするTPPへの参加を前提に、 “日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする”という立場から、農業・農村を企業のビジネスチャンスにするためのものであり、“大規模経営と企業経営が10年後には農業の8割を担う構造づくり”を進め、その邪魔になる農協や農業委員会、農地制度の解体を狙うものにほかならない。

 9日に政府与党が施政方針演説に間に合わせるために、農協「改革」案をJA全中に強引に押しつけたことは断じて容認できない。

 安倍首相はこういう「農業破壊改革」を「農家の視点に立った農政改革」と言いくるめ、「これからは農家の皆さん、地域農協の皆さんが主役」と美辞麗句を並べたが、これほど欺まんに満ちた施政方針演説はかつて聞いたことがない。

 三、全国の農協・農村関係者は、米価を暴落させ、TPPに暴走する安倍政権に憤りと危機感を募らせており、歴代政府の農政の責任を農協に押しつけ、“全中を改革すれば農家の所得が増え、農業が立ち直る”かのようなアベノミクス農政のでたらめさを見抜いている。

 農民連は、この4年間に築きあげてきたTPP反対の国民的な共同運動の成果を生かし、農協・農村の関係者、国民との共同を広げて断固たたかう。

(新聞「農民」2015.2.23付)
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2015年2月

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