「農の会」2015年定例研究会
農民連に団体加盟する「農の会」が1月31日、2月1日の両日、2015年の定例研究会を開催しました。
米価下落・TPP・農政改革・高齢化
社会のなかの“農”の役割考えよう
「農を愛し、農を科学し、農を創る」を基本姿勢として、広い視点から農業技術の交流を行ってきた「農の会」は、今年、創立60周年という節目の年を迎えました。今年の研究会では、TPP交渉参加や米価下落など日本農業が困難に直面するいま、現代社会のなかの農の役割、そして未来にむけた私たちの生き方や暮らし方を考えよう、私たちの生活のなかにある農への気づきを大切にしようと、「Do you 農 your life?」をテーマにディスカッションしました。
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食と農のつながりを考えた定例研究会 |
話題提供者として、東京農工大学講師の澤佳成さん、長野県松本市の会員の石綿薫さん、群馬県農民連会長の木村一彦さんら5人が発言。
澤さんは、昨年、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」の実態が実は輸入品いっぱいであることなどに触れながら、日本の食と農を世界経済システムの視点からひもとき、自由貿易を絶対視する今の経済のありように強い疑問を投げかけました。
生産者と消費者がつながって
群馬農民連の木村さんは、豪雪被害や米価暴落のなかで、群馬県ではいま大規模農家が自ら命を絶つほどの事態になっていることを生々しく語り、「いま安倍政権は農地法を改悪して農業に株式会社を参入させ、TPP反対の声をあげた農協をつぶそうとしている。しかし、昨年が国際家族農業年だったように、世界の流れはまったく逆。自然風土も、歴史も、文化も、国や地域でさまざま。農や食も多様性が大切で、それを現したのが『食糧主権』という言葉だと思う」と述べました。
東京・神田駿河台で国産食材90%以上というお弁当屋さん「ワーカーズ・フェアビンデン」を開いている石井正江さんは、生協での産直運動を経て「生産者と消費者がつながりあえる場所に」とお店を開いた経緯を語りました。価格の制限があるなかで、原価を抑える苦労なども紹介しながら、「こんなに野菜がおいしいとは思わなかった」と毎日買いに来てくれる人も多いことや、食や農の大切さを伝える場になっていると話しました。
運動と日々の食事の両面から
会場も含めた討論では、「輸入食材だらけの350円の弁当しか買えない人も多い格差社会のなかで、生産者と消費者のつながりをどうつくっていったらいいだろうか」と問いかける声も上がりました。石綿さんは、「ご飯と塩とノリだけのおにぎりだけでも自分で作った食事はコンビニ弁当よりずっとまともな命の糧になるし、金銭的にも安い。問題は多くの人にそういう時間的、精神的余裕がないこと。労働運動はそういう人間的な生活を求めてがんばっているのだと思う。労働運動のように社会を変える運動と、日々の食事を少しでも手作りして、ちゃんとしたものを食べようという提案と、両方の側面から取り組むことが必要だと思う」と述べ、大きな拍手がわきました。
2日目は、ヤロビ技術や微生物の活用など、農の会がこれまで取り上げてきた技術運動や活動を振り返り、交流しました。
(新聞「農民」2015.2.16付)
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