「農民」記事データベース20150209-1152-08

再生可能エネルギー普及
全国フォーラム

 「いかそう地域の資源、原発に頼らない社会へ!」をテーマに、「再生可能エネルギー普及全国フォーラム2015」が、1月24、25の両日、静岡市内で開催され、全国から150人が集いました。


地域の資源いかして
原発に頼らない社会へ

 1日目の全体会では、NHK報道局のチーフディレクター、井上恭介さんが「里山資本主義のススメ」と題して基調講演を行いました。「里山資本主義」は、木質バイオマスなど地域に眠る資源を生かすことで、過疎や高齢化に悩む地方に解決策を提言したシリーズ番組で、その内容をまとめた新書が2013年7月に出版され、ベストセラーになっています。

 ずっと以前からコモディティ(商品先物取引)やデリバティブを取材してきた井上さんは、リーマンショック後の経済の惨状から、「マネー資本主義」一辺倒に異を唱える発想転換のキーワードとして「里山資本主義」を編み出したことを紹介。里山の雑木を活用したエコストーブや、岡山県の製材会社での木質バイオマス発電の取り組みなどに触れながら、「地方には“山の木”のように身近にあって活用されていない資源がいっぱいある。こうした目の前にあるものが持つ価値に気づき、活用することが、輸入で、しかも価格暴騰する資源に依存するいまの日本社会を見直すことにつながる」と述べました。

FIT(固定価格買取制度)改悪に反対
再エネ最優先のエネルギー政策に

 市民による太陽光発電の普及に取り組んでいるNPO法人「太陽光発電所ネットワーク」の都筑建さんが、国が進めている再エネ電力固定価格買取制度(FIT)の改悪などについて特別発言を行いました。都筑さんは、「今回のFIT政策の改悪は、原発再稼働のための電力供給枠を真っ先に確保したうえで、残りを再エネ電力の導入可能量として制定したもので、優先順位がまちがっている。再エネ電力を優先的に導入したあとで、残りを火力発電などで調節し、需要量の変化に合わせるべきだ」と、強く批判しました。

 各地の先進事例学び合い交流

 2日目は、分科会。FITの改善など再エネ最優先社会への転換をテーマにした第1分科会、自治体の取り組みをテーマにした第2分科会、各地の先進事例に学ぶ第3分科会が開かれました。

 第3分科会では、静岡県内で市民から資金を借り入れる「借入金」のスタイルで小規模な太陽光市民共同発電所づくりを進めている「太陽光発電所ネットワーク静岡」、木質ペレットストーブの普及に取り組んでいる「もくぺれ」の寺尾功さんらが報告を行いました。

 市民出資を募る際の事業組織や、出資金の法的な扱い方、FITの活用方法、電力会社への接続費用など、具体的な意見や経験が活発に交流されました。なかでもFITの買取価格が今後も下げられていく見通しのなかで、再エネ電力を事業として推進していくことの難しさを指摘する声も多くあがりました。

 助言者をつとめた「市民電力連絡会」事務局次長で、「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ」事務局長の山崎求博さんは、「たしかにFITの改悪など課題はあるが、再エネ普及の流れはすでに全国に飛躍的に広がっており、もう止められないし、止めてはならない」と強調しました。

 電力自由化も視野に入れて

 会場からも、「全国には再エネ電力だけを使いたいという消費者はたくさんいる。来年度には電力小売りも自由化されることになっており、私たち市民も、再エネ電力だけを扱う市民によるPPS(=東京電力など既存の大手電力会社ではない、新規参入の電気供給事業者)なども視野に入れて、再エネ普及に通り組む段階にきているのではないか」などの意見も出されました。

(新聞「農民」2015.2.9付)
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2015年2月

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