農水省
備蓄米買い入れ拒否を文書で公表
下落の責任を消費者に転嫁
農民連が前々から指摘してきたとおりに、新米価格が大暴落しています。グラフのように、民主党政権が誕生した昨年9月以降、下がり続けた相対価格(卸への売り渡し価格)は、2010年産で、前年9月の価格と比べて14%、2000円も下がってしまいました。
直近(09年産)の米生産費は60キロあたり1万6733円です。農家の販売価格は、概算金から想定すると全国平均で60キロ9200円程度。生産費とのギャップは1等米で約7500円、2等米なら約8500円です。米を作る生産費の半値で出荷するという異常な事態に、怒りの声が広がっています。
農水省は、「40万トンの備蓄米を買い入れるなど米価下落対策を強く要請する」旨の意見・要請が600件にも及んだとして、11月4日、これに対する回答書をホームページ上で公表しました。その内容は、米価下落は需給ギャップや消費者の低価格志向の強まりが原因として、政府の責任を棚上げにし、消費者に責任を転嫁。買い入れは戸別所得補償制度と矛盾するため、消費者の理解を得られないなどの理由を並べて「買い入れはしない」というもの。
この「買い入れしない」という農水省の姿勢こそが、最大の下落要因となっています。米業者は、米価の底が見えず買い控えざるを得ず、産地側は売り急ぎに走らされています。こうした悪循環が米価をさらに下落させているのです。
各地の運動の強まりに
一転、米穀機構の買い入れ容認へ
こうした中、各方面から下落対策の要求が集中するもとで、農水省は一転して過剰米対策を容認の方向にカジをきろうとしています。豊作過剰時のために農家が拠出した「集荷円滑化対策」の基金321億円を活用して、米穀機構が一定量を買い入れ、飼料米として処理するもので、JA全中などが要請してきた案です。買い入れ価格や数量、実施方法などは不明ですが、「やらない」としてきた過剰米対策を、第三者機関を通じてとはいえ実施するとなれば大きな前進であり、この間のわれわれの運動と国民の声に押されたものです。
いま大事なことは、あらゆる手段を用いて40万トン程度の過剰米を処理し、需給の安定と米価の回復をはかることです。過剰米処理を求める運動をさらに強めて、政府を追い詰めていくことが求められています。
そして、こうした異常な事態を二度と繰り返さないために、政府に米の需給と価格の安定に責任を持たせること、需要もないのに77万トンもの計画で進めているミニマムアクセス米の輸入を中止させることが重要です。
(新聞「農民」2010.11.22付)
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