「農民」記事データベース20101108-948-08

COP10監視活動参加 ビア・カンペシーナ代表団
静岡お茶農園 長野白毛餅 視察

生産者を質問攻め にぎやかに交流

 COP10の公式会議がお休みとなった10月23・24日の両日、ビア・カンペシーナの代表団は名古屋市を離れ、農業視察に出かけました。23日は静岡県藤枝市にある農民連青年部長の杵塚歩さんのお茶農園を訪問し、24日は長野県上伊那農民組合の白毛餅(もち)の取り組みを視察しました。代表団の多くが農家や農家出身というだけあって、農業の現場に到着すると目がランランと輝き、生産者を質問攻めにして、にぎやかに交流しました。
(満川暁代)


〈静岡〉

有機・無農薬の茶畑訪ねる

“良質の茶って?”“販売方法は?”

 杵塚さんのお茶園を訪ねる途中に立ち寄った森下剛紀(つよき)さん(牧之原市)の農場では、自然薯(じねんじょ)の収穫を見学。ビニールに包まれた自然薯が地中から掘り出されると歓声がわき起こります。森下さんが有機・無農薬の栽培方法や工夫を説明すると、さっそく「土づくりは?」「種は買うのか?」など、具体的な質問が矢継ぎ早に浴びせられました。

 移動の車中では杵塚歩さんから、「ペットボトルの茶飲料が増加し、巨大メーカーによる市場支配が強まり、茶葉の価格が暴落している」などの説明を聞きつつ、杵塚農園に到着。その農村風景の美しさにすっかり感動していました。

 さっそく杵塚歩さんの父の敏明さんに案内されて、紅茶の製茶工場と山の上の茶畑を訪れました。完全有機・無農薬でお茶を作って35年という敏明さんは、「うちはお茶の栽培も製茶も、自然のなかで、自然に作ることを大切にしています」と話し、今では自然のバランスの取れた、良質な茶葉がとれることを紹介しました。

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交流会で韓国のシン・ジオンさん(右)とカナダのコリーン・ロスさん(中央)から杵塚敏明さん(左)に在来種子をプレゼント

 代表団からは「有機・無農薬栽培にして、経費は下がったか?」「販売方法は?」といった質問や、「良質なお茶とはどういうものか」「慣行農法の農家はなぜ、オーガニックにしないのか」という質問も出され、敏明さんは一つ一つていねいに答えていました。

 夕食には、自然薯かけご飯、イノシシ肉と野菜の煮物、目の前の川で取れたアユや野菜の天ぷらなど、ほとんど地元の食材で作られたという料理が振る舞われ、代表団も「おいしい!」「これこそ“本物”の食べ物だ」と、大感激。地元の青年も駆けつけ、各国の農業の現状を出し合ったり、持ち寄った種子を交換したりして、夜更けまで交流しました。


〈長野〉

50年分保存の種子をみる

“農家が共同して守るのは大切ね”

 24日は伊那市まで遠征し、上伊那農民組合の白毛餅の取り組みを視察。稲刈りはすでに終わってしまっていたため、黄金色に輝く稲穂を見ることはかないませんでしたが、事務所を訪問して「50年分保存してある」という白毛餅の種子を見せてもらいました。

 事務局員の弦巻吉春さんが家庭用の冷蔵庫に保存された種子を見せながら、「あまりに小さな取り組みで、皆さんをがっかりさせていないか心配です」と言うと、代表団はいっせいに首を振って、「とんでもない。けっして恥じることはない。どんなに小さくても、農民自身が、共同して種子を守るということに取り組んだことが重要なのです」「どんな運動も、初めは小さな取り組みから始まるんです」と口々に述べ、ここでも質問が飛び出しました。

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伊那市からの帰路、長野県農民連会長の市瀬拓朗さん(右から2人目)のリンゴ園でリンゴ狩りを楽しむ代表団。ここでも市瀬さんを質問ぜめにして、熱のこもった交流となりました

 弦巻さんが「韓国では運動によって在来種の保護に行政からの支援を勝ち取っているという話に学んで、私たちもそういう運動に取り組みたい」と言うと、全員が大きくうなずいていました。

 カナダのコリーン・ロスさんは「日本の農村を実際に訪れて、持続可能な農業が行われているところが見られて、とても良かった」と感想を話していました。

(新聞「農民」2010.11.8付)
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2010年11月

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